本来であれば、鈴木にとっての2020年は“特別なシーズン”になるはずだった。

 昨季、4連覇を目指すチームは苦戦を強いられ、シーズン土壇場で4位となりクライマックス・シリーズ出場を断たれた。しかし鈴木は初の打撃タイトルとなる首位打者(.335)、最高出塁率(.453)を獲得するなど孤軍奮闘。さらに11月には侍ジャパンの一員としてWBSCプレミア12に出場。全試合4番として打率.444、3本塁打、13打点を記録。申し分ない活躍で日本の世界一に貢献し、大会MVPにも輝いた。

昨季、初の打撃タイトルとなる首位打者、さらに最高出塁率を獲得した鈴木誠也選手

 年々レベルアップしていく鈴木の打撃。一軍デビュー間もない頃から見守ってきた迎祐一郎一軍打撃コーチもその進化を認める。

 「首位打者と最高出塁率も獲得したシーズンでしたが、やはり相手バッテリーが勝負をさける場面も多くありましたよね。自分で勝ち取った四球がたくさんある中で獲れたタイトルだったように思います。もちろん打つだけではなく、我慢するところなどメンタルも含めて成長したと思います。もともと選球眼がある選手でしたが、そういう部分が進化したからこそタイトルを獲得できたんだと思います」

 プロ4年目の16年、21歳のシーズンから4年連続打率3割、本塁打20本超えを記録。17年からは4番に抜擢され、右足首骨折というアクシデントも経験しながらも、ケガを乗り越えてリーグ3連覇に貢献してきた。そして4番打者として結果を残し続ける中で勝負を避けられるシーンも増えた。実際、四球の数は4番を託された17年は62個、3連覇を果たした18年は88個、昨季がリーグ2位の103個。4番定着以降、徐々に増えていった四球数は、我慢を覚え、つなぐ野球に徹してきた証とも言えるだろう。いつも自己評価に厳しい鈴木だが、昨季獲得した最高出塁率に関しては一定の満足感があった。

 「昨季、僕としては大事な1年になると思っていました。そういう思いでチームが勝てなかったので、納得はいっていないんですけど、その中で出塁率というのは基準というか目標にしていた部分でもあったので、最高出塁率というタイトルが獲れたのは僕の中では良かったと思っています」