1人の打者としてさらなるレベルアップを強く印象付けた19年シーズンだったが、迎コーチは、鈴木の能力を認めるからこそ高い水準での働きを期待する。

 「もちろん打撃コーチという立場としては、レベルが高い打者なだけに『もっともっと』と要求する部分も多くなりますよね。特に期待したいのは打点ですね。打順としてはおそらく今季もクリーンアップを打つでしょうし、『ランナーをかえすという場面で、どれだけ誠也が仕事をしているか』によって、チームの勝敗というのはかなり変わってきますから。もちろん彼の負担は掛かりますけど、それができるレベルの選手だと思っているので、そこは期待したい部分ですね」

 昨シーズン記録した打点数は87。決して少なくない数字だが、16年から3年連続90打点以上を記録していただけに、首脳陣からすれば鈴木のポテンシャルの高さ、実績からすれば、物足りない数字と見ていたのかもしれない。

 「丸さんと新井さんが抜けて、3番、5番が固定されない形で途中までずっときていたので、『自分で決めよう』とか、そういう思いが正直強かったですね」

 昨季終了直後、シーズン前半の自身について鈴木がそう振り返っているように、3連覇を支えた上位打線が崩れたことも多少なりとも影響していた。そして8月後半からはチーム事情により全試合で3番を任されるなど、例年とは異なる考えで打席に向かっていたのだろう。

 しかし今季は開幕前の練習試合では全試合で“定位置”の4番を任されており、再び不動の4番として多くの打点を稼ぐことが期待されている。

 「今シーズンも4番という打順に入る中で、得点圏打率にこだわらず、とにかくランナーが三塁にいる状況で自分がどういう打撃をすれば良いかを、より意識してほしいですね。当然その考え方を持っている選手ですし、そういう能力もあるので、『チームを優勝に導いてくれるだけの打点』に期待したいです」

 迎コーチがそう話すように、今季もチームの勝敗は4番・鈴木のバットにかかっているといっても過言ではない。