4月8日に開幕するプロ野球独立リーグ ルートインBCリーグ。ここでは注目チームの監督の今季にかける想いに迫る。

 第3回目は、2022年の南地区王者・茨城アストロプラネッツ。今季新たに就任したのは、監督トライアウト参加者99名の中から選ばれた伊藤悠一氏。異色の経歴を持つ新監督から、今季の茨城アストロプラネッツを紐解く。

NHKのディレクターを経て、茨城アストロプラネッツの監督に就任した伊藤悠一氏。

―まずは伊藤悠一監督の経歴から聞かせてください。

 「高校までプレーヤーとして野球をやっており、その後慶応大で競走部、いわゆる陸上部で陸上十種競技という競技を行いました。その後NHKに入社し、ディレクターの仕事を通して、スポーツだけでなく様々なジャンルをみなさんにお伝えをする仕事をしていました。そして昨年の監督トライアウトを受験し、新たに茨城アストロプラネッツの監督に就任させていただいています」

―高校までは野球部、そこから大学陸上部というのは大きな挑戦のように感じます。

 「私にとっても大学での競技経験は大きな分岐点になりました。大学でも野球の道に進むつもりでしたが、当時肩の強さと足を売りにしていたので、他の競技にも活きる道があるのではと考えたのです。そう考えた時に、陸上の十種競技に挑戦してみることにしました。陸上はとても正直で、足の運び方など、何か一つを変えたら、成績も変わります。色々なことを考え尽くさなければ答えが出ない。個人スポーツだからこそ身についた考え方だと思います」

―茨城の監督選考の基準には“明確なチームビジョンがある人”とありました。

 「まず、私が監督選考に挑戦しようと思った理由は、自分の環境に疑問が生じたら別の道を考える、それは逃げではなく、自分の成長のためであれば大切なことだと考えているからです。テレビ局のディレクターから監督になったのも、挑戦することで成長できると思ったからです。チームとしての一番の目的は、選手を次のステージに送り出すこと。普通のチームは勝利を目指すと思いますが、茨城は育成し、次のステージを目指すサポートをするところにあります。その過程で、試合での勝利があるイメージです。独立リーガーの選手たちは、浪人生だと思っています。そんな選手たちが次のステージに羽ばたける環境をつくっていくのが、私が描くビジョンです」

―茨城は、サポートスタッフが多方面に渡って充実している印象です。

 「私が監督を務められるのは、スタッフが充実しているからこそだと思います。たとえば専門家を呼び、選手とやり取りを重ねて問題を解決していく場合、選手とコーチ、スタッフをつなぐのが私の役割です。もちろん試合では采配や選手起用を行いますが、いかにチームを円滑に回し、選手の成長につなげていくかが大切なのです。ですから『マネジメント監督』と呼ばれます。他球団の監督とは求められる役割が違うかもしれません」

―シーズン開幕は間近ですが、チームの仕上がりはいかがですか。

 「実はかなり危機感を感じています。昨年の優勝チームとしてみなさんから見ていただくと思うのですが、実態として8割くらいの選手が入れ替わっています。私自身も監督1年目ということもありますし、挑戦をしていかなければいけません。技術指導はコーチ陣に任せていますので安心できますが、チームマネジメントという点では満足できていません。今までの経験が活かせる部分と活かせない部分があるので、声がけや雰囲気づくりについては工夫が必要だと思っています」

―チームビルディングにあたって取り組んだことは?

 「キャンプ期間中はキャプテンを日替わりにしました。狙いとしてはそれぞれが他者の目線に立って気づきを持ってほしいと思ってのことです。そうすることで個人にもチームにも良い影響があるはずです。その他にはコミュニケーションの取り方も工夫していて、ティーチングではなく、コーチングが大切だと意識しています。選手に考えさせる場を提供する工夫をしています。組織の上の者が何かを言って動いても、それはすぐに消えてしまいます。コーチが何も言わないのが理想で、苦手な部分に気づかせる機会を提供していきたいと思っています」

―学びや成長という点では、メジャー経験のあるアレン・ハンソン選手が加入しました。

 「外国籍選手の加入はよくあることで、GMの海外経験が豊富ですので、そういった選手に会う機会が多いことが要因ですかね。チームとしては中軸を打ってもらい勝利に導いてほしいという思いもありますが、それよりも若い選手が刺激を受け、学んでくれることが大切です。言葉は通じなくても、メジャーを経験している選手のプレーから伝わるもの、感じとれることは多いと思うので、そうやって成長した若い選手と外国人選手が力を合わせ、化学変化を起こしてほしいですね」

―シーズンを迎えるにあたり、目標と茨城アストロプラネッツファンのみなさまへメッセージをお願いします。

 「目的は『NPBに選手を1人でも多く送り込む』ことです。まずそのために勝利をつかみ、目標である『日本一になる』ことが前提です。ファンのみなさんからは、私が監督になったことは注目していただいていると思います。経験のない者が監督になった時の、これまでにない新しい監督像を見ていただいきたいです」

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 茨城アストロプラネッツは4月8日にホームのTOKIWAスタジアム龍ケ崎にて埼玉武蔵ヒートベアーズと対戦。開幕戦には地元出身のお笑い芸人・四千頭身の都筑拓紀さんが試合前トークイベントや始球式に登場するなどイベントが予定されている。