正確無比なスリーポイントシュート、 警戒する相手を引きつけて隙を突くパス。バスケットボール界の名門と言われる学校やチームを経て、日本を代表する選手へと成長した辻直人選手が、2022−23シーズンのチームキャプテンに任命された。これまでの数々の経験を活かし、チーム史上初のCS進出へと導いたそのチカラの秘密を伺った。(2023年4月7日取材)

広島ドラゴンフライズ SG #3 辻 直人選手

◆常勝チームとの差を縮めるために

シーズン終盤ですが、ここまでチームキャプテンとしての心境はいかがでしょう?

「僕だけでなく、チームみんなでリーダーシップを取ろうと言い合っているので、みんながそういう意識を持って、試合や練習に取り組んでいるのがすごく伝わっています。一人に任せきりではなく、みんなでチームを高め合おうという意識ですね。若い選手も増えてきていますが、それらの選手も含め、みんなでやっていこうと。

若い選手はやはり発言をしづらいこともあると思うのです。でも、若い選手だからこそ気付ける点もあると思います。だからそこをフォローして、発言しやすい雰囲気を作るのが僕の役割の一つでもあるのかなと思っています。結果として、みんなで高め合うという意識があったから、昨シーズンよりも成績を含め、チームの状態が良いんじゃないかなと感じています」

―2021-22シーズンに強豪・川崎ブレイブサンダースから広島へ移籍されてきて、両チームの違いを感じることがありますか?

「やはり川崎は常勝チームと言われているくらい、チャンピオンシップ(以下CS)の常連です。そういったある意味チームの伝統というか文化が根付いているチームです。ドラゴンフライズはB1に上がって間もないチームですし、初めてのCSを狙っています。常勝チームと言われるチームではないので、伝統のあるチームと、これから文化をつくっていく発展途上のチームという違いはありました。

でもドラゴンフライズでプレーしにくいということは全くありませんね。ただ常勝チームに追いつくことが、簡単なものではないなとすごく感じています。僕自身、川崎に入団したタイミングくらいから、チームが良い成績を残しはじめたのですが、それはやはり、それまで続けてきた人たちがいたからこそ、先輩たちがうまくまとめてくれていたんだということに気づけました。だから、川崎での経験や感じたことを広島でもと思っているのです。でもそれを成績で見せることは、やはり簡単ではないなと強く感じています」

辻 直人(つじ・なおと)

1989年生まれ、大阪府出身。バスケットボールの名門である京都・洛南高では2年時にインターハイ準優勝、ウィンターカップで優勝。3年時にはウィンターカップ連覇を成し遂げた。青山学院大学の4年時には、関東大学リーグや全日本大学選手権で連覇を果たし、MVPに選ばれる。卒業後の2012〜21シーズンには川崎ブレイサンダースに所属し、常に上位の成績を収める強豪チームの一員、また日本代表として活躍。2022年から広島ドラゴンフライズに加わり、今シーズンからチームキャプテンとして選手たちを牽引している。

広島アスリートマガジン5月号は、「まだ見たい!もっと見たい!」勝利を知る経験者たちの魅力をお届け!CS初進出に導いた経験者・辻 直人選手独占インタビューのほか、カープ3連覇を支えた投打の主力たちの現在地に迫ります。