2016年〜2018年、カープがリーグ3連覇を果たした当時、不動の「1番・ショート」としてチームを牽引した田中広輔。2019年以降は故障もあり、苦しいシーズンが続いている。

 今季は、ここぞの場面で印象的な一打を放つなど、その存在感を見せつけている。チームの布陣が変わりゆく中で、背番号2の経験は不可欠だ。ここでは、節目のプロ10年目を迎えたベテランの思いに迫る。(全3回・2回目)

今季プロ10年目を迎えた田中広輔選手

◆気持ち的にもっと自分を楽にして打席に立とう

─30歳を越えて体の変化を感じますか?

「動きに関しては膝の手術もありましたし、その中で一歩行けなくなっていたり……そういう部分はありますが、そこまでの変化は感じていません。やはり疲労の抜け方ですね。若い頃は寝たら回復していましたが、今は朝起きるのも気を遣うようにしています。より体のケアと準備を大事にするようになりましたね」

─シーズンに臨むにあたり、技術的な変化はどのような点ですか?

「技術的には大きくは変えていませんが、気持ち的にもっと自分を楽にして打席に立とうと思っています。今まで成功体験も失敗体験も数多くしてきたなかで、出続けているからこそできることもあった中で、今はそういう立場ではないので、もう一度自分の長所を生かしたバッティングをしたいと思うように変えました

─その長所はどのような点ですか?

「引っ張れる打球を打つことです。プロの速球に対して苦労する選手も多いですが、僕は幸いできていたので、それをもう一度大袈裟にやってみようと思っています。そうしなければ修正できないですから。ある意味原点回帰ですね」

─オープン戦ではショートのみならず、サード、セカンドでの出場もありました。複数ポジションで出場することについて、難しさを感じる面はありますか?

「そういう年齢にもなりましたし、一度レギュラーを手放すと大変な世界だと分かっていました。そこはグッと堪えてそこからもう一回やっていかなければならないと思っています。ただ、そこでいろんなところを守れるようになることはチームのプラスになると思っていますし、僕の野球人生はショートが長かったですけど、いろんなところを経験して今後の野球人生にプラスになると思っています」

─新井監督は機動力復活を目標とされています。

「真面目で良い選手が多いので、どうしてもゲームになって良い子になりすぎる選手が多いと感じます。普段は陽気な子が多いのですが、ゲームになると固まってしまっている印象がありますね。僕もそんなに足が早い方ではなかったんですけど、やはりスタートを切る勇気ですね。あとは周囲を見ることだと思います。グラウンドにはたくさんヒントが落ちているので、いかに自分の中で拾っていくかが近道ではないかと思います。僕も出塁すれば、どんどん行きたいなと思います」