黒星発進となった『鬼門』の交流戦だったが、日本ハム戦では5年ぶりの同一カード3連勝を飾ったカープ。投手陣では先発・九里亜蓮、床田寛樹らの力投が光り、矢崎拓也・島内颯太郎・ターリーが試合終盤を引き締めるなど、徐々に勝ちパターンも確立されつつある。

 OB・大野豊氏が、交流戦の戦いぶり、そしてシーズン後半戦への期待を、独自の『視点』で解説する。(取材は6月上旬)

5月10日の中日戦では、2020年以来となる完封勝利を挙げた九里亜蓮。

◆勝てる試合で確実に勝ち、苦手の交流戦で善戦

 これまで交流戦で苦戦をしてきた要因の一つに、パ・リーグの投手をなかなか攻略できず、点が取れないということがありました。そうしてなかなか相手投手を打ち崩せずにいるところで、逆に相手に点を取られてしまうという展開をよく目にしていたように思います。

 今年のカープの戦いを見ていると、守りを踏まえて投手陣が頑張る、『負けない野球』のように感じられます。

 例えば、6月7日の日本ハム戦では、菊池涼介や矢野雅哉、韮澤雄也らの好プレーがありました。あのように、点を取って勝つというよりも、相手を抑えて守って勝ったという試合が今年は多いと感じています。昨シーズンであれば落としていたような試合を、今シーズンはしっかりと守って勝てている。そういった印象を持ちました。

 栗林良吏の不調がある中でも、矢崎拓也、島内颯太郎、ターリーといった投手たちが状態を上げてきていることは好材料です。安定した投球を展開し、安心して見ていることができるようになったのは、チームにとっても大きいですね。

◆試行錯誤が実を結び、先発陣では九里が好投

 選手それぞれに目を向けると、先発投手陣では九里亜蓮が非常に良い投球をしています。

 オフの自主トレではアメリカに渡り、体の使い方や投球フォームなどを研究していたようです。これまではまだまだ試行錯誤というところもありましたが、何かを感じながら、手応えをつかみかけている結果、自分のものになってきているのではないでしょうか。

 九里は大瀬良大地と並んで、投手陣を引っ張っていってもらわなければならない存在です。試合内容、投球、球質など、結果を残す要素のある投球をしていますから、この調子を維持し続けていってもらいたいです。

 なんといっても、九里は2021年の最多勝投手です。先発投手陣の中心となってやっていってもらわなければならない立場にもなってきています。その期待のなかで、良い投球を続けてくれているのですから、交流戦が終わったシーズン後半戦も、引き続き先発投手陣の柱として期待をしていきたいと思います。