思わず心を奪われる!カープの話題をゆる~くまったりと展開してくれる“オギリマワールド”。関東出身ながら中学生からカープファン。独自のタッチで描かれるイラストを交えたコラムでおなじみのオギリマサホが、広島アスリートマガジンWEBで、新たなカープの魅力を切り取る。今回は『鬼門』とされた『交流戦』について、オギリマ視点でゆる~く取り上げる。

オギリマサホが現地で購入したという交流戦思い出グッズ(イラスト・オギリマサホ)

◆十分に健闘した『鬼門』の交流戦

 私は、人間としての器がすこぶる小さくできている。そのため、ここ数年は交流戦を観に行くことを控えていた。カープの交流戦は「鬼門」とも言われ、現に3シーズン連続で最下位だったからである。負ける可能性の高い試合を、現地で見届ける勇気は私にはない。「お前はそれでもカープファンか」と言われれば返す言葉もないのだが、心穏やかに過ごすための生活の知恵のようなものでもあった。

 ところが今年、新井貴浩監督は交流戦を前に「結果を気にせず仕掛けていきたい」と積極的な発言をしていた。もしかすると、これまでとは少し風向きが変わっているかも知れない。そう思った私は勇気を出して、ZOZOマリンスタジアムのロッテ第2戦のチケットを入手したのであった(関東在住の人間が、遠出をせず観戦に行けるカープ交流戦はZOZOマリンのみであったため)。

 新井監督の言葉通り、カープは日本ハム戦に3連勝、続くロッテ初戦にも勝利し4連勝と躍動していた。交流戦で4連勝するのは6年ぶりのことである。私は最寄りの海浜幕張駅からスタジアムまでの道を足取り軽く歩いていた。こんなにワクワクした気持ちで交流戦を見られるなんて。

 結果として私が観戦した第2戦はサヨナラ負けを喫してしまうのだが(お昼に交流戦限定のあなごめしではなく、澤村(拓一)選手の厚切り牛タン・ステーキ丼などを食べてしまったからいけなかったのだろうか)、それでも点を取ったり取られたりの接戦で試合が推移し、「全く歯が立たない」という試合展開ではなかったので、とても楽しめた。

 交流戦全日程を終え、カープは9勝9敗の5割で7位となった。7位とは言え、今年の交流戦は混戦で、1位~4位までが11勝7敗であるから、十分に健闘したと言えるのではないか。

 今年の交流戦は、特に守備の巧さが際立っていたように思う。特に日本ハムとの初戦、9回裏2死一・三塁のピンチで、ショートへの打球を矢野雅哉が好捕、ファーストの韮澤雄也に送球してアウトにしたシーンが印象的であった。私が観に行った試合でも、5回裏のロッテ・池田来翔のファールゾーンへの飛球を、菊池涼介がつかんでアウトにした。こう書けば普通のプレーだが、菊池はほぼライトの守備位置まで駆けていって、後ろ向きにフライを捕ったのだった。

 交流戦で一番印象に残ったこと、それはどこのビジター球場でもカープファンが真っ赤に観客席を埋め尽くしていたことであった。コロナ禍以前の熱気に戻ったようで、声援の力強さを私も現地でひしひしと感じたのである。

 いずれにしても来年からは、交流戦に怖気づくことなく、ワクワクしながら観戦しに行けるだろうなということを、今から楽しみにしている。

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オギリマサホ
1976年東京都出身。イラストレーターとして雑誌や書籍等の挿絵を手掛けるかたわら、2018年より文春オンライン「文春野球コラム」でカープ担当となり独自の視点のイラストコラムを発表。著書に『斜め下からカープ論』(文春文庫)がある。