一振りで試合の流れを変えることができる野球の華「本塁打」。外野スタンドをまるで強襲するような鋭いライナーや、見守る全ての人の時間を止めてしまうような大きなアーチは圧倒的な迫力と美しさで、スタジアム全体を熱狂に包む。カープの歴史の中でこれまで5人が本塁打王のタイトルを獲得。ファンを魅了してきた彼らの偉業を振り返ってみよう。
◆言わずものがな、カープの本塁打王
球団史上初、そして4度の本塁打王に輝いたのが、日本球界を代表する長距離砲で高い出塁率を誇った「ミスター赤ヘル」山本浩二(1969-86)。初の本塁打王のタイトルは44本塁打を放った10年目の78年。さらに80年にも同じく44本、翌81年は43本で本塁打王のタイトルをつかんだ。カープ一筋で放った通算536本塁打はNPB歴代4位で、77年から83年は5年連続で40本塁打以上をマーク。大卒入団で唯一、500本塁打を達成している。
●山本浩二(やまもと・こうじ)
1945年10月25日生、広島県出身。廿日市高-法政大-1968ドラフト1位-広島(1969-1986)。【生涯成績】打率.290、2339安打、536本塁打、231盗塁
◆アタリかハズレか、期待度抜群!
山本浩二引退後の大砲として期待され来日したランス(リック・ランセロッティ、1987-88)は、1年目の87年は、阪神のランディ・バースと中日の落合博満が三冠王を争うだろうという大方の予測を覆し、豪快なスイングで39本塁打を放ち本塁打王のタイトルを手にした。ただし、403打数88安打での打率.218は規定打席に達した選手の中でワースト。三振もリーグワーストの114を喫しており、ホームランか三振かという極端な成績は、当時の人気CMから「ランスにゴン」と揶揄された。
●リック・ランセロッティ
1956年7月5日生、米ロードアイランド州出身。1977年MLBドラフト11巡目-パドレス(1982)-ジャイアンツ(1986)-広島(1987-88)-レッドソックス(1990)
【NPB成績】打率.207、138安打、58本塁打、1盗塁
◆対空時間の長い、息を飲む本塁打
1993年には他球団に脅威を与えたビッグレッドマシン打線で4番を張った若き大砲の江藤智(1988-2005)が、34本塁打、82打点をマークして初の本塁打王に輝いた。翌94年8月には16本塁打を放ち、当時の月間本塁打の日本タイ記録を達成した。95年には39本で2度目の本塁打王と、打点王(106点)との二冠を獲得。美しい放物線を描きながらスタンドインする打球に「天性のアーチスト」と称えられた。
●江藤 智(えとう・あきら)
1970年4月15日生、東京都出身。関東高-1988年ドラフト5位-広島(1989-1999)-巨人(2000-2005)-西武(2006-2009)
【生涯成績】打率.268、1559安打、364本塁打、82盗塁
◆天性の長打力の上に、努力の積み重ね
山本浩二監督の下で4番に座り、重圧に苦しみながらも猛練習に耐え、技術を身に付けた新井貴浩(2000-07、15-18)は、2005年、6試合連続本塁打を放つなど山本浩二が持つ球団のシーズン本塁打記録44本に迫る43本で本塁打王を獲得した。広島に復帰後、25年ぶりのリーグ優勝を果たした2016年シーズンは39歳で19本塁打を放ち、セ・リーグ最年長でのMVPにも輝くいた。
●新井貴浩(あらい・たかひろ)
1977年1月30日生、広島県出身。広島工高-駒澤大-1998年ドラフト6位-広島(1999-2018)
【生涯成績】打率.278、2203安打、319本塁打、43盗塁
◆広島に愛され続けた助っ人
2012年シーズンに途中で加入した大型助っ人外国人のブラッド・エルドレッド(2012-18)は、開幕から本塁打を量産した14年に前半戦だけで29本塁打をマークし、シーズン37本塁打でタイトルを獲得した。また16年には日本シリーズで3試合連続本塁打を放つなど、豪快なスイングでファンを魅了し続け、カープに在籍した7シーズンで通算133本塁打を放った。これはカープに在籍した助っ人外国人の中でジム・ライトル(1977-82)に次ぐ歴代2位の記録だ。
●ブラッド・エルドレッド
1980年生、米フロリダ州出身。2002年MLBドラフト6巡目-パイレーツ(2005、2007)-ロッキーズ(2010)-タイガース(2012)-広島(2012-2018)
【生涯成績】打率.259、496安打、133本塁打、7盗塁