交流戦を9勝9敗の五分で終えたカープ。後半戦に入ってからは今シーズン初、4年ぶりとなる8連勝を飾り、首位・阪神にも急接近。ファンの期待も大いに膨らんでいる。

 ここではOB・大野豊氏が、新井カープを独自の『視点』で解説。今季好調の要因を、野手陣から紐解いていく。(数字は全て7月12日時点)

現在は負傷で戦線を離脱しているが、交流戦途中から4番を任され打線をけん引した西川龍馬。

◆昨シーズンとの差を感じられる、機動力を活かした試合展開

 新井カープ初の交流戦は、9勝9敗、7位という順位に終わりました。交流戦中は4連勝もあり、レギュラーシーズンでつくった貯金をキープできたのも大きかったと思います。交流戦明けの戦いを見ても、6月末からの6連勝など、大いに期待ができると感じる試合を見せてくれました。この連勝も、決して楽な試合ばかりではありませんでしたが、ここに来て、先発ローテーションのうちの4人にある程度の安定感が出てきたことは非常に良い流れなのではないかと思います。

 ただ、7月に入ってからは厳しい試合が続いた時期もありました。やはり理想的なのは、先制して、逃げ切るという展開です。敗れた試合も、一方的に負けた試合ばかりではありません。拮抗した試合をいかにものにできるかが重要です。連勝も必要ですが、大きな連敗は絶対に避けなければなりません。上位にいるチームになんとか勝ち越して、勢いを付けていきたいと思います。苦手なチームがないという状況をつくっておきたいですね。

 勝利した試合では、野手陣の守備の貢献度も非常に高かった印象がありますし、機動力の面でも昨年とは全く違う印象を持ちます。盗塁数も、シーズン半分を過ぎた時点で昨年の26盗塁を遥かに超えて、40盗塁を記録しています。エンドランなどを踏まえた走塁面でも、昨シーズンとの差を感じます。失敗も多いですが、動かなければ何も起こりませんから、そうした姿勢は非常に高く評価したいと思います。

 打線では、交流戦の途中から西川龍馬が4番に座っていました。西川は一見、4番打者タイプではないようにも感じますが、打率はセ・リーグでも2位と非常に高い選手です。打撃内容を見ていても、本塁打を量産するタイプではありませんが、つなぐこともできますし、球を捉えることもできます。チャンスにも強く、総合的に考えると、今の段階では西川が最も4番に適しているという首脳陣の判断だったのでしょう。

 ただがむしゃらに振り回して引っ張るだけでなく、長打も期待できて、つなぐこともできる。チャンスで走者を返すこともできる。そういう役割分担のなかでは、西川が最も4番打者に適していたのではないかと感じます。

 
広島アスリートマガジン8月号は、「追悼特別特集 北別府 学 ありがとう 20世紀最後の200勝投手」カープが誇る大エース北別府学が残した偉業の数々を振り返りながら、強いカープを共につくりあげた仲間たちが語るその姿をお届けします。