今季カープ打線の3番に固定され、開幕からチームを牽引する秋山翔吾。5月にはNPB通算1500安打を達成するなど、目標である通算2000安打に向けて歩み続けている。ここでは独占インタビューの一部をお送りする。シーズン最多安打日本記録など、数々の足跡を残してきた男が考える「記録」への意識とは?(取材は5月末)

今季、NPB通算1500安打を達成した秋山翔吾選手

◆1本の積み重ねが大きなものになっていく

ー『記録』についてお話を伺います。5月16日のDeNA戦では出身地の神奈川県の横浜スタジアムでNPB通算1500安打を達成されました。

「昨年マツダスタジアムで日米通算1500安打を達成したときのほうが、ここまで来たな、という感覚でした。通算2000安打という目標が個人的にあって、1本の積み重ねが大きなものになっていくという実感が正直あります。入団したときに『どういう選手になりたいか』というビジョンと、積み重ねてきて形になってくる数字もあると思うんです。記録の影響が大きければ大きいほど、それが最終的に自分の肩書きになるもの、自分を説明するものになってくるのだと思います。プロ野球選手でいるうちは、職業が野球選手と説明できますが、辞めた後はどういう選手だったかという説明を自分ですることはないですよね。自分自身のキャリアが伸びてきて、引退という言葉が全く訳がわからないものではなくなってきています。同世代の選手も少なくなってきていますし、いつ何が起きても……というなかで、元気なうちにいろんなものをしっかりやっておきたいなと強く思っています。他の選手にチャンスを与える怖さとか、1打席を無駄にできないという思いというのは今年に関してはより強くなってきている気がします」

─2015年にNPB新記録となるシーズン216安打という大記録を達成されています。この記録を残している事実は、現在の秋山選手にとってどのようなものになっていますか?

「僕を説明する上で一番分かりやすい記録になっていますよね。記録を達成するまで何も武器を持たない状態でその前のシーズンまでプレーしていたので、僕の場合はそれまでに『上がってきそうだな』というレベルではなく、急に日本記録を出した人間なわけです。日本記録を持っているということで、侍ジャパンに呼ばれたり、オールスターに呼ばれたり、日本記録を持っているから呼ぶだけの意味があったのではないか思います。それがあるからこそ、『もっと丁寧にプレーしなければいけない』、『ファンのみなさんに期待されているな』と思いながら、プレーしている面があります。3割を打つだけと思われるのも嫌だったので、ゴールデン・グラブ賞を獲るだとか、もともとは守備から入っていった選手なので、そこを疎かにしたくない気持ちもありました。この記録というのは、今の自分を形容してくれる言葉の1つじゃないかと思います」

─秋山選手はこれまでのキャリアでさまざまな記録を持たれています。記録を継続する難しさはどんな部分だと考えますか?

「1回目の記録であったり、打者個人としての目標、レギュラーになるなどは、正直出来ないことはないと感じています。たとえば一軍にデビューしたばかりの選手が、1本のヒットや本塁打で賞賛されたり、1本が大きなことに捉えられるというのは選手にとっては楽しい時間です。その後打てなくて悩んだとしていても『実績と経験が足りないな』で片づいたりするものです。記録を出していこうとか、レギュラーになっていこうというのは、次のシーズンにある程度期待値が固まった状態で上積みを求められてプレーする難しさがありますよね。僕が落とし穴だと思うのは、オフのメディア対応であり、地元に帰ったときの賞賛です。これは意外と浮つきやすいと思っています。そのオフをいかに過ごすか? が、レギュラー選手の、野球以外で必要な対応力だと思います。そこで練習が疎かになって、自分が野球がうまくなったという感覚になりがちになります。そういう部分の対応力が大事になると思います」

─シーズン最多安打記録を達成された2015年には31試合連続安打を記録され(左打者歴代1位)、西武時代はパリーグ歴代1位、NPB歴代2位となるフルイニング出場記録を残されています。ご自身のなかでどのような記録ですか?

「31試合連続安打で言うと、そこまで積み上がってきて1試合1本打てた結果がそういう事になるんだなということになります。でもフルイニング出場に関していうと、体力も技術もいろんなものを整わせるということを続けてきたという意味で、僕のなかでは一番胸を張れる記録です」