新戦力、復帰選手の躍動もあり、8月のホームゲームでは2戦連続で劇的勝利を収めるなど、チームは徐々に“サンフレッチェらしさ”を取り戻しつつある。ここから一つでも上の順位を狙うため、チームに必要なものとはーーー。
サンフレッチェ広島OB・吉田安孝氏が、いよいよ終盤戦を迎えるチームの現状を解説する。(記事中のデータはすべて8月28日の取材時点)
◆ホームデビュー戦で魅せた圧巻ゴール!ピースマッチを勝利に導いた加藤陸次樹
8月中の試合では、新加入の戦力である加藤陸次樹、マルコスジュニオールの両選手がホームデビュー戦でゴールを挙げるという素晴らしい活躍を見せてくれました。
まずは、浦和戦(8月13日、○2-1)での1点目を振り返りましょう。
あのシーンは、ゴールを決めた加藤はもちろんのこと、パスを出したDF・塩谷司の選択も素晴らしかったと思います。あの時点では右サイドに展開していくという選択肢もあったなかで、もっとも相手が嫌がる場所にスルーパスを出しました。ファーストチョイスで相手の一番嫌がる場所を選ぶことができるのは、塩谷の経験値があればこそです。そして、「さすがストライカーだな」と感じさせる加藤のゴール。相手DFがついていてプレッシャーもかけられた場面だったとは思いますが、キックフェイントで交わして体の向きを変え、得意の右足でニアサイドを振り抜きました。加藤のテクニックを存分に発揮した、素晴らしいゴールだったと思います。
加藤とマルコスが加入し、満田誠も復帰、さらにナッシム・ベンカリファ、ピエロス・ソティリウ、ドウグラス・ヴィエイラら外国人選手もいるFWのポジションは、かなりハイレベルな激戦区となります。
ここまでのサンフレッチェはサイドからの攻撃が強みの一つでしたが、勝ち点が遠ざかっていた期間は、クロスを上げても相手にクリアされてしまう場面を何度も目にしていました。ただ、中央でプレーできる選手が増えてきたことで、相手の意識をサイド以外に引きつけることもできますし、マルコスのように、一人で中央から得点していくスーパーな技術を持った選手も加わってくれました。
さらに、相手の意識を中央に引きつけることができれば、逆にサイドが空いてくるということも考えられます。彼らの加入によって中央を突破できる選手が増え、本来の強みであったサイド攻撃も、より生かすことができるようになるのではないでしょうか。