2023年シーズン、全員野球でカープを2位にまで躍進させた新井貴浩監督。2022年11月、監督就任後“初仕事”となったのがドラフト会議だった。このドラフトで1位指名されたのが斉藤優汰だ。北海道岩見沢市出身、苫小牧中央高では甲子園出場はないものの、189センチの長身から投げ込まれるストレートは最速151キロ。北の大地で育った将来のエース候補をカープは1位指名した。

日南春季キャンプ一軍スタートとなった斉藤

「いざ終わってみたら、あっという間だったなという感じですが、8月ぐらいまでは長く感じました。僕があまり夏場が得意ではないというのもあると思うのですが、それで長く感じたのかなと思います。夏場に体調を崩してしまったので、完全にとは言えないのですが、練習していく中で、いろいろ慣れた部分もありますし、いろいろなことを経験できたシーズンだったと思います」

 期待の高卒ドラ1右腕は1年目をそう振り返る。2023年シーズンに残した数字は二軍で5試合に登板し、0勝1敗、防御率4.02。二軍戦で初登板となった5月24日のオリックス戦、二度目の登板ともに1回を投げて2失点。その後は体調を崩して約2ヶ月間登板から遠ざかった。しかし、後半2試合の登板は違った。4試合の登板となった8月24日のソフトバンク戦で初先発を果たすと、5回無失点。さらに9月2日のソフトバンク戦では7回2失点。2試合連続で好結果を残した。

「5試合のうち最初の2試合は自分の思うような投球ができず、打たれたり、失点することが多くありました。3試合目は自分のやりたいことを試しながらの登板だったのですが、あまり制球が定まらず、四球を多く出してしまった試合でした。ただ、後半2試合はある程度やりたいことが試合の中でできたので、前半の3試合に比べると数字的にも手応えが残りました。甘く入ってしまったストレートを前半3試合は捉えられてしまったことが多かったのですが、ファールが取れるようになったのは、自分的にピッチングをしていく中で気持ちが楽になり、有利なカウントで進めていけると思います。また、変化球を試したりもしたので、いろいろ試すことができたのが1番大きかったかなと思います」

 斉藤の最大の武器は150キロを超えるストレート。プロの世界はそう甘くなく、当初は痛打される場面が目立ったが、ストレートを活かすために変化球を有効的に活用することで、一定の手応えを感じていた。

「(ストレートは)自分の生命線だと思っているので、ストレートありきの変化球が自分のスタイルです。スピードも含めてもっともっとレベルを上げていきたいと思います。ですが、質が少し落ちてしまうと、痛打されるという感覚があります。スライダーなどは、ストレートが走っているときにはプラスにすることができていると思います。この辺はストレートとのコンビネーションですが、スライダーは、ある程度通用するかもしれないと感じました。またストレートでファールを取れたのも1番大きな収穫かと思います」

 また昨シーズン中には、カープのレジェンド・黒田博樹球団アドバイザーからも数々のアドバイスを受け、プロの投手としての考えを学んだ。

「黒田さんと話をさせていただいた際に、ピッチングの考え方などいろいろと教えていただいたこともすごく良い経験になりました。最初は、二軍でのデビュー戦の後に、ベンチのバックネット裏で黒田さんとピッチングについて話をさせていただきました。『どういう意図で投げるのか』『ただ投げるだけでは次につながらない』『試合中は自分が投げた球の内容を覚えておくように』ということなどを言われました。ただ、それを全部できるほど、まだ僕に余裕がないので少しずつやっていこうと思っています」

 シーズン後に参加したフェニックス・リーグでは思うような投球を見せることができなかったが、日南秋季キャンプでは「ストレートの質とスピードを上げること」にこだわり、精力的にブルペンで投げ込みを続けた。2023年11月12日に宮崎で行われた、侍ジャパンとの練習試合では、2回無安打無失点。こだわりのストレートは最速152キロを計測するなど、成長をアピールした。

「平均して150キロ超えるようになりたいなと思います。僕の場合、ストレートで勝負していくタイプなので、アベレージで出せるようになれば、相手打者に対して効果的になると思います。目標とする投手は、藤川球児さん(元阪神)みたいなストレートを投げたいです。スピード面で言うと同じセ・リーグの髙橋宏斗さん(中日)はずっと150キロを超えて投げられているので、目標としたいです」

 プロ1年目、苦しみながらもさまざまな経験を積んだドラ1右腕。プロ2年目を迎える今季は一軍キャンプスタートとなった。ストレートにこだわるドラ1右腕は初の一軍マウンドを目指し、連日アピールを続けていく。