カープ一筋19年。2020年に現役を引退した石原慶幸コーチは、2023年から一軍バッテリーコーチとして再びカープのユニホームに袖を通した。 昨年は熱血指導で捕手陣を陰で支え続けてきた。

 ここでは昨シーズン中、石原コーチに「捕手・坂倉将吾選手の成長」を中心に聞いたインタビューを改めて振り返る。(2023年8月収録。全2回・後編)

坂倉将吾選手へアドバイスを送る、石原慶幸バッテリーコーチ(2023年撮影)

◆サードから見た景色はプラスに。捕手としての色はこれから。

─坂倉選手を指導するなかで、吸収力はどう感じていますか? 

「遅くはないとは思います。あとは本人の取り組む姿勢、気持ちもすごく重要だと思います。そういう観点で見ると、坂倉から捕手への思い入れなど、伝わるものはもちろんあります。どの捕手からもそれは感じますが、坂倉については『覚悟を決めてキャンプインしたな』というものが伝わりました」

─坂倉選手の性格をどのように感じていますか? 

 「野球に対して真面目な印象ですね。ただ、野球選手として、捕手として色が出てくるのはこれからではないでしょうか。今は、僕であったり、スコアラーであったり、いろんな人に話を聞いてはその意見を反映しようとしています。ということは、彼の本来の色はまだまだ出てきていないと思います」

─シーズンが開幕してから坂倉選手はチーム最多のスタメンマスクです。序盤はミスが目立つ場面もありました。

「初めて捕手専念という形でシーズンに入って、序盤は打撃の調子が上がらない時期がありました。捕手専念という部分も少なからず影響したのかもしれません。捕手としての守りに関しては、ミスはつきものですし、当然起こり得るものだと思っています。技術的なミスは仕方ありませんが、予測、準備、心構えを怠ることは絶対になしにしようと話はしていました」

─リード面はどう評価しますか?

「シーズン中に評価するのはすごく難しいことだと思いますし、これからでしょうね。捕手はシーズンを通してのチーム順位であったり、目に見えないものでの評価、もしくは数字として見えるものでも評価されます。これから大きな試練が待ち受けているかもしれませんが、開幕時に比べると、バタバタした感じはなくなってきているように感じます」

─今季のカープは僅差での勝利が多くあります。捕手としてこの状況を経験することは、大きなものなのでしょうか?

「もちろん大きいですね。『こんなに勝つことは大変なんだ』とか、『あの1点が余計だった』など、学ぶべき部分は多いと思いますし、そこから反省点も出てきます。また、彼が試合で考え抜いた結果、チームが勝つことができていれば、それは正解ですし、捕手にしかわからないことはたくさんあります。僕の役目は彼と話をしながら、気づいたことを伝えて、頭を整理してあげるようにしています」

─コミュニケーションはどの程度取られるのでしょうか?

「たとえばアツ(會澤翼)であれば、10が全てだとすれば10言わなくても、2、3言えば、こちらの言いたいことを理解してくれます。坂倉の場合は捕手としての経験値を考えると、話す機会は多いかもしれませんね」

─坂倉選手にとって、會澤選手の存在も大きいと思うのですが、石原コーチから見て2人の関係性をどう感じますか?

「アツも坂倉とはよく話をしてくれてます。アツは週に1、2回ぐらいの出場です。僕も経験していますが、それはすごく大変なことだと思います。ただ、そんななかでもリード面や、投手の気持ちを盛り上げるなど、頑張ってくれてます。いろいろと思う部分もあるとは思いますが、チームのため、後輩のために言葉や、行動で示してくれています。僕からしてもとても助かりますね」

─坂倉選手に指導して、コーチとして喜びを感じる瞬間はどんなときですか?

「やはり彼がマスクを被って試合に勝った瞬間が一番うれしいですよね。負けるしんどさも知っていますし、勝ち切るしんどさも知っています。きっと苦しいんだろうなと思って見ていますし、勝ち切った瞬間は選手と同じくらいうれしいです。自分が選手としてやっていた方が気が楽という部分もありますね(苦笑)」

─石原コーチ個人としてどういう選手に育ってほしいですか?

「僕の理想の捕手像としては、勝てる捕手です。1対0だろうが、10対9だろうが、最後の最後は勝ち切る。そういう捕手になってほしいです。そういう選手になるためにも、いろいろな経験をしていほしいですね。失敗の方が多いかもしれませんがそれを次に活かせるような考え方をもって試合に臨んでほしいです」

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