2015年、三度目となるリーグ優勝を果たしたサンフレッチェ広島。当時黄金期を迎えていた広島のゴールには、絶対的守護神・林卓人の姿があった。2023シーズン限りでピッチを去った林が、OB・吉田安孝氏と共に振り返る『サンフレッチェ広島の魅力』とは。(取材は2023年12月。全5回・第4回)

2023年11月25日のエディオンスタジアムラストゲームで行われた、林の引退セレモニー。

◆「彼なら広島を離れても、必ず成功します」。両親のもとに届いた1通の手紙

吉田「広島を出て、改めて感じた広島というクラブの良いところはどこだった?」

「やっぱり『人』です。選手、指導者、フロントも含め、関わるみなさんの人間性だと思います。人柄とか、人格とか。謙虚ですし、人として当たり前のこと、例えば『挨拶』が当たり前にできるという部分もすごく良いなと改めて感じました。人のために行動できたり、そうした一つひとつが、広島はちゃんとした情熱の下で実践できているんだなと思いました。僕が加入した当時は、今西和男さんがGMをされていたんですが、僕が札幌に移籍した時には、実家の両親に宛てて手紙を書いてくれていたそうなんです」

吉田「卓人が移籍した時には、今西さんはもうクラブを離れていたよね?」

「そうなんです。にも関わらず、『彼なら広島を離れても、必ず成功します』という手紙をくださっていたんですね。実は僕はそれを全然知らなくて、ごく最近になって、母から聞かされました。僕には内緒で、両親にそんな手紙を送ってくださっていたんだと聞いて、その時は泣きそうになりました」

吉田「それから卓人は、札幌から仙台に移籍して活躍して、2014年に広島に復帰するわけだけど、その時にインタビューをさせてもらったことがあるんだよね。覚えてる?」

「はい、覚えています。確か復帰後すぐでしたよね」

吉田「その時に卓人は、『移籍した後もずっと広島のことを見ていて、ずっと意識していた。いつか広島に帰りたいと思っていた』と話してくれたんだけど」

「そうですね。本当にサンフレッチェが好きだったので、広島に戻るには、もう一回クラブからオファーをもらえるくらい活躍するしかないと思っていました。だからこそ、移籍先でも頑張れたんだと思います。ただ、まさか本当にオファーをもらえるとは思っていませんでしたし、もらえたとしても、『現役最後の半年くらい、セカンドで呼んでもらえたら良いかな』という感覚でした。いろいろなタイミングが重なって2014年にオファーがもらえたのは、本当にラッキーだったと思います」

(第5回に続く)