昨シーズン、両リーグ最多のイニング数を記録するなどリーグ屈指の先発投手として存在感を示した九里亜蓮。今季もカープ投手陣の柱としてフル回転が期待される男はついにプロ11年目で初の開幕投手にも指名された。

 ここでは、常に進化を求め続ける背番号11の独占インタビューをお送りする。(全3回/1回目)

独占インタビューに応じる九里亜蓮投手

◆フォーム変更と向き合ったオフ

─まずはオフのトレーニングについて伺いたいのですが、投球フォーム変更が話題となりました。

「シーズンが終わった11月にドライブライン(アメリカ・アリゾナ州のトレーニング施設)のスタッフが日本にいたので、今年のオフはアメリカに行かず、千葉県の施設で投球フォームの変更などに取り組んでいました。対面ではないときにはオンラインなどでも行っていました」

─具体的にはどの部分に変化を加えたのでしょうか。

「スタッフが来ているときに、いろいろな数値の測定があったのですが、僕の体の構造を見たときに、強い球を投げられるのは重心が高い位置だと出ました。最初は歩幅をそのままで重心を高くしようと試したのですが、難しい部分がありました。ですので、歩幅を狭めることで重心を自然と上げるという結論に至りました」

─昨季もフォーム変更に挑戦した中で、苦戦されているコメントをされていました。その経験を踏まえての変更だったのでしょうか。

「そうですね。自分の中で変わらずにそのまま続けてダメだったと思うよりも、『変わってダメだった』。その方が僕は良いと思っています。自分自身、もっとレベルアップしたいという気持ちが強かったので、チャレンジしました」

─投球フォームの変更は投手にとってチャレンジだと感じます。

「チャレンジしてダメであっても、自分の中で新しい発見があって、マイナスになることはないと思っています。逆に何も変えずにダメだったときの方が自分の中で後悔すると思っています。それであれば、いろんなことに取り組んで行きながら、良いものは取り入れて、合わなかったとしても、今後の知識として役立つかもしれないと考えるようにしています」

─さまざまなチャレンジを行ったオフを経て、キャンプに突入しました。今回のキャンプはどのようなテーマで臨まれたのですか?

「ストレートには強いこだわりを持ってやってきたので、キャンプに入ってもそこを継続しました。また今回のキャンプはある程度、調整方法などを自分自身で考えて進めたり、一任していただいた部分があったので、キャンプ前に自分の中でしっかりと計画を立てて進めました」

─2月15日の沖縄キャンプ初日にはブルペンで120球の投げ込みを行われましたが、プラン通りだったのですね。

「自分の中ではブルペンでの投球練習を行う中で、1度は100球を超える練習を行いたかったので、プラン通りでしたし、しっかりと投げ込みすることができたと思っています」

─変更を進めてきた投球フォームについて、キャンプである程度納得行くものにはなったのでしょうか。

「昨シーズンの下積みがあったというか、投球フォームにもどかしさを感じながら過ごしてきて、僕の中では歩幅を縮めるということが違和感だらけでした。その歩幅を自分の中で確立させていく、という作業はキャンプを通じて出来たと思います。昨年一度思い切り変えて、合わないな、と感じていた頃に比べれば、今は自分のイメージする範囲内で進めることが出来ていると思います」

─打者に対して投げたときの感触はいかがでしたか?

「打撃投手を務めた段階では、打者の反応を聞くことができましたし、シート打撃では、変化球も交えて投げる中でまずはストライクゾーンに投げ込む事を意識していました。その中で自分のイメージしていた通りの投球が出来たと思います」

─こだわりを持ち続けているストレートについて、感覚はいかがですか?

「正直、自分では分からないことが多いですが、受けてもらう捕手の皆さんに話を聞いてみると、昨年よりも良いボールが来ていると言っていただいています。そういう言葉があれば僕もストレートに対して自信を持って投げ込めると思っていますし、僕はもっと自信を持ってストレートを投げたいという気持ちが強いですね。まだまだ、これからという感じですけどね」

─九里投手は多彩な変化球が特徴と見られる事もありますが、投球の軸はストレートと考えているのですね。

「僕自身、変化球投手かもしれないですが、そう思い込みたくない部分もありますし、しっかりとストレートを投げ込む事が出来て初めて、変化球も活きてくるものだと思っています。ストレートに関してはこれからも常にこだわりを持ってやっていきたいです」

─新しい変化球である『スプリットチェンジ』の習得も話題となりました。

「これもドライブラインのスタッフと考えながら、試すことになりました。ピッチデザインと言って、球の回転数であったりいろんなデータを取った結果、昨年投げていたツーシームと、フォークの球速と落ち方もあまり変わりがなかったんです。なので、違う球種を入れていこうと考えた時にスプリットチェンジの話が出たんです。メジャーの投手も投げていましたし、昨年DeNAに在籍していたバウアー投手も投げていたので、動画等も見て研究しながら、自分の中で探しながらやっています。実戦で試してみましたが、落ち過ぎたりする部分があるので、現段階では、一定の変化ではなくても良いのではないか? と思っていて、これから自分の変化球に育てていければと思っています」

《2回目につづく》

 

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