変化球を投げるために必要な考え方とは

さて、ここまで大瀬良投手のカットボールの魅力を紐解いてきましたが、変化球を投げるために必要な考え方も紹介しておきます。

大前提ととして、変化球をマスターする際、何よりも大切なのは『イメージ』です。投げる本人が、変化やスピード、回転の角度を、頭でイメージしたうえで、握り方や投げ方を考えていくことが一番大切です。ほかの選手が実際に投げている変化球をもとにイメージする形でも構いません。

変化球をマスターできない人は、「どうやって投げたらいいですか?」と聞いてくるケースがほとんどです。それは本人がゴールを描いていない証拠です。球の握りを参考にする人がいますが、それに固執していては上達しません。なぜなら、人によって、それぞれ手の大きさが違うからです。

例えば、私がトレーニングを担当しているオリックス・バファローズの山岡泰輔投手の手はプロの投手としてはそこまで大きくありません。他の投手と比べたら確実に小さいでしょう。なので、他の選手の握りを参考にしても思い通りの変化球を投げることはできません。彼は、どんな曲がりの変化球を投げたいか、そして、その球を投げるにはどんな握りでどんな回転をかけたらいいかをイメージしたうえで変化球の練習に励んでいます。

これから変化球をマスターをしたいと考えている方がおられたら、まずは、投げたい変化球の変化やスピード、そして回転の角度などをイメージすることから始めてみてください。

もう少し踏み込んだ話をすると、イメージの次に大切なのは、そのイメージを数値化することです。ちなみに「Mac’s Trainer Room」では、選手本人が投げたい変化球のゴールを明確にしたうえで、ラプソードなどの最新機材を使ってトレーニングをしていきます。

カープの島内颯太郎投手が、ラプソードを使って変化球の投げ方を修正したという記事を見ましたが、選手やコーチの“感覚”だけで修正をしているとなかなかうまくいかなかったと思います。“感覚”に“数値”を融合させないと、それはいつまでたってもカンのままです。“こうなりたい”という具体的なイメージを描いたうえでラプソードを使えば、データをもとにそれを達成するための具体的な練習方法を考えることができます。

もう一つ、変化球を練習する際、ケガの心配をする方も多いと思います。小学校の頃から投げさせてもいいのかと聞かれますが、僕がゼネラルマネージャーを務める少年硬式野球チーム「東広島ポニー」では、中学1年生の間は変化球を投げることを禁止しています(ポニーリーグ全体で禁止)。

野球のボールで変化球を投げることは禁止していますが、『ウィッフルボール』という特殊なボールを使って変化球を投げるのは推奨しています。ウィッフルボールとはアメリカで考案されたプラスチック製のボールで、握り方と投げ方次第で、誰でも変化球を投げることができます。このボールは軽いので肩や肘に負担もかかりません。

ちなみにドミニカでは、ボールの代わりにペットボトルのキャップを使って野球をやっていたりします。キャップはウィッフルボール同様に、プラスチック製で軽いのでいろんな変化をつけることができます。ドミニカの選手が比較的変化球を苦にしない選手が多いのはこうした環境も大いに影響していると思います。

ウィッフルボールを投げる際に大切なのは、どんな変化をつけたいのかを頭でイメージすることです。これは野球のボールで変化球を投げる時もまったく同じです。変化球を投げたいと思った方は、まずはウィッフルボールからチャレンジして、変化球のイメージをふくらませてみるのもいいかもしれませんね。

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高島誠(たかしま・まこと)
広島県東広島市の西条町にある、野球専門のトレーニングジム「Mac's Trainer Room」の代表。オリックス・ブルーウェーブ(現オリックス・バファローズ)、MLBワシントン・ナショナルズのトレーナー経験があり、現在も数多くのプロ野球選手とトレーナー契約を結んでいる。趣味はパルクールとサウナで、サウナ・スパスペシャリストの資格も持つ。野球トレーニングのオンラインサロンの運営、【英語】x【身体作り】x【野球】がテーマの中学硬式野球チーム「東広島ポニー」に携わるなど、様々な分野で活躍。「Mac's Trainer Room」のYouTubeチャンネルでは、野球トレーニングに関する動画を公開中。
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