いよいよ明日から、クラブ初の頂点をかけて琉球と対戦する広島ドラゴンフライズ。ワイルドカードからの下剋上を目指すチームの指揮を執るのが、カイル・ミリングヘッドコーチだ。ここでは、2023年に収録したカイルHCの独占インタビューを再編集してお届けする。頂を目指すチームをつくる、指揮官の哲学に迫った。(取材は2023年3月・全3回/3回目)

広島ドラゴンフライズの カイル・ミリングヘッドコーチ(写真中央)

◆自分の仕事に誇りを持っていることは、日本の素晴しさ

―個性の違いももちろんありますが、指導をする上で外国のチームと日本のチームの違いはどんなところでしょうか。

 「ヨーロッパのチームは、毎試合必ず勝たなければいけないというプレッシャーがとても大きいのです。勝つためだけに選手・スタッフを含めた人事の入れ替わりがすごく激しいですね。シーズン中でも変わりますし、勝ちに対する緊迫感は日本以上にあります。ただ、そういったスタイルだと、チームの考え方をしっかりと浸透させることが難しいのです。もちろん勝ちにこだわるのは日本でも一緒ですが、日本はもっと長期的なスパンで、大きな目標に向かって取り組んでいく傾向があります。若い選手を育てながら、じっくりと辛抱強く勝ちにこだわるスタイルです」

―日本のチームをマネジメントする上で、良かった点はありますか。

 「日本の文化として、お互いをリスペクトするという点です。献身的な姿勢や、今取り組んでいることを一生懸命に頑張るという点は日本のチームの長所です。その他にも選手をはじめ、周りのスタッフも、自分の仕事に誇りを持っている点は、素晴らしいと思います」

―コーチのキャリアの中での失敗談、そしてそこから得たものはありますか?

 「ヨーロッパでコーチをしていた1年目、2年目の開幕からの数試合は、勝ちに対する意識が強すぎて、負けてしまった時には世界の終わりかというくらいショックを受けていました。でも、コーチを続けてきて私自身が変わったのは、もっと辛抱強く、負ける試合も含めてチームを見続けることが必要だなと感じるようになったことです。技術的な面では、5年前は今とは全く違うバスケットボールをしていました。『私はこういうバスケットボールがしたいんだ、君たちはそれをしっかりと遂行しろ』というトップダウンのチームづくりをしていました。でも今はすごくオープン、選手やスタッフからのいろいろな意見を取り入れながらのチームづくりをしています。選手一人ひとり強みや弱みをしっかり見定めながら、戦術を構築することを学んできました」

―カイル・ミリング ヘッドコーチが考える、理想とするコーチ像とは?

 「自分の意思をしっかりと伝え、相手の思いをきちんと汲み取れるコミュニケーターですね。時代は常に流れているので、今教えていることが常に正しいということにはなりません。文化や個性をしっかり理解し、常に勉強し、一喜一憂せずに新しいことにチャレンジし続けていくことが、大切だと思います」