大学3年の頃から頭角を現わしつつあった梵氏だが、プロ野球選手のレベルは氏の想像を遥かに上回るものだった。

 駒澤大4年になる直前の春、梵氏は山田久志監督率いる中日ドラゴンズの春季キャンプに参加する機会を得た。場所は沖縄の北谷で、全日本のユニホームを着用して2月1日のキャンプインから合流。約2週間の参加ではあったが、井端弘和氏や立浪和義氏といった名選手に混じり、一通りの練習をこなしていった。

「よく覚えているのは福留孝介さんに茶々を入れられたことです。ロングティーのときに隣同士だったんですが、逆風だったこともあって僕は全然打球を飛ばすことができませんでした。すると福留さんが『お前、全然飛ばないな』と。『どうすれば飛ぶようになるでしょうか』。緊張で声が震えましたが、意を決して質問をぶつけてみました」