サンフレッチェ広島一筋でチームをけん引してきた青山敏弘が、2024シーズン限りので引退を発表した。
2004年に岡山作陽高から加入し、日本代表にも選ばれた広島のレジェンドが、初めてキャプテンに就任したのが2014年。ここでは2014年のインタビューを再編集してお届けする。当時3年ぶりに無冠に終わった2014シーズン、キャプテン・青山が語ったこととは。(『広島アスリートマガジン』2015年1月号に掲載)(全2回/第1回)
◆不安定な戦いが続いた2014年
— 2014年を振り返ってどんな印象ですか?
青山 間違いなく満足していません。序盤はACLを戦いながら我慢強くやっていたと思いますが過密日程だったので、リーグ戦は勝ち点を拾うことがやっとの状況でした。改善しなければならないこともありましたし、チームが常にいいものを出せず不安定でしたね。
— 3連覇という大きな目標を持ったスタートでしたが、モチベーションはいかがでしたか?
青山 そんなに簡単なものではないとはわかっていましたが、新たに良い選手が入ってきていい競争がチーム内でありました。それだけに、シーズン当初はやり続ければ不可能ではないという思いはありました。でもそう上手くは行きませんでした。特にセンターラインが変わってしまうと、チームのバランスに変化が起きるので、なかなか難しい状況であったと感じます。
— 特に、夏場は苦しい時期が続きました。
青山 今振り返ればチームの雰囲気も良くなかったと思います。そのときだけではなく、最初から何かがおかしかったのかもしれません。攻撃面に関して言えば、昨年から上手くいかない部分を感じていましたが、結果を出していました。13年は優勝できましたし、チームがうまく回っているときは、何も言わなくてもいいのかもしれません。ですが、14年のように良くないときは必ずありますし、自分が少しおかしいなと思ったときに対応していればという思いはあります。
— チームが上手くいかない感覚は、どのタイミングから感じていたのですか?
青山 結果的に夏場にチームが良くない時期を迎えてしまいましたが、シーズンの最初から改善できていれば良かったのだと思います。それができていれば、夏場にどん底までいかず、勝ちが拾えていたのかもしれません。それは序盤戦の戦いぶりを含めて、もっと改善できたところを自分がキャプテンとしてみんなとコミュニケーションを取り、コントロールしていかなければならなかった部分だったと感じています。
— 7月23日の柏戦から8月30日の徳島戦まで、青山選手は故障もあり試合から遠ざかりました。チームの調子が思わしくなかっただけに、もどかしさがあったのではないでしょうか?
青山 それはなかったですね。誰もが試合に出たいものですが、自分一人で何かできるとは思っていません。まずはみんなが同じ方向を向くべきですし、それがなければ自分が入っても何も変わらないと思います。自分がプレーしようがしまいが、チームを一つの方向に向かわせることを意識していました。
◆キャプテンとしての難しさ
— チームがどん底にあった夏場に、青山選手の提案でミーティングを行ったそうですね。
青山 8月上旬あたりは、僕のなかで完全にどん底の状態だと感じていましたし、はっきり言って遅いぐらいの行動だと思いました。今思えば結果的にその行動は間違っていなかったと思います。しかし本当はそんなことにならないように、ちょっとずつコミュニケーションをとって、チームがうまくいくようにするのがキャプテンの役割だと思っているので、自分のなかではもっとうまくやるべき部分だったと思います。
— 序盤にインタビューさせていただいたときには、キャプテンマークをつけることについて「強く意識はしていない」と仰っていました。チーム状態が安定しないなかで、キャプテンとしての難しさを感じた部分もあったのでしょうか?
青山 確かに難しさは感じましたね。うまくチームをまとめるために、キャプテンの役割は大事なんだなと思いました。夏前の時期はそんなことはわからず、自分がしっかりと試合に出てプレーで示せれば何も問題ないと思っていました。そのときは実際、自分もチームも悪くはない成績だったのでそう思ったんでしょうね。今までやってきたキャプテン、13年までの寿人さん(佐藤)も、もっとコミュニケーションをとってきたのだと思うし、改めてキャプテンの難しさを痛感してます。今さら遅いですけどね。でも今季味わったこの苦しさは、必ず自分が成長して返さないといけないと思いますし、糧にしなきゃいけないと思っています。
— キャプテンを経験されたことで、ご自身のプレー、意識が変わることはありましたか?
青山 もちろんありますね。たとえば失点したときに僕が下を向いてしまえば、チーム全体が下を向いてしまうと感じました。一番後悔しているのはリーグ再開初戦の横浜FM戦です。ロスタイムに同点に追いつかれ、逆転されたのですが、そのとき僕はベンチでアップをしていました。なぜそのときにベンチからチームを鼓舞する声を出せなかったんだろうと悔やみました。やはり自分の役割を考えたとき、そういうときこそ声を出さなきゃいけないんだと感じました。それは試合に出ていようが、控えとしてベンチにいても関係なく、キャプテンの行動がチームの方向性を決めるものだと改めて感じました。
(第2回へ続く)