今季は開幕から好調な打撃を継続し、打率リーグトップを維持するカープ堂林翔太。かつて堂林と三遊間コンビを組んでいたカープOB梵英心氏に、今季の堂林について語ってもらった。

2015年以降は二軍での出場が多くなった堂林選手。その苦しんだ経験を形にできていると梵氏は言う。

◆苦しんできた数々の経験を自分のものに出来ている

 2012年以降、堂林選手は毎年期待されながらも、年々出場試合数が減っていきました。その要因はさまざまあると思いますが、端から見ていた限り、悪い結果が出ている時に自分なりの解消法を持っていなかったことが大いに関係しているように感じていました。

 また悪いときは悪いときになりにある程度の割り切りが求められますし、周囲もそういったアドバイスはしてきたのかもしれませんが、それを受け入れるだけの精神状態ではなかったのかもしれません。これを僕なりの言葉で言うなら、アドバイスを噛み砕き自分のパフォーマンスとして“表現ができていなかった”ということです。

 彼が二軍で苦しんでいた時期も近くで見ていましたが、もともと練習熱心な選手ですし、苦しい時期であっても腐ったりそういう態度は一切見せていませんでした。今シーズン、プレー中の顔を見る限り、腹の括ったような表情を見せていますし、おそらく自分のやりたいことがしっかりと表現できているのではないでしょうか。

 好調な打撃が注目されていますが、僕個人的な見解としては、しっかり“打てる体勢”で構えることができているのが良くなったポイントの一つだと感じます。もともと投手が投げた球に対し、少し胸が開いた状態でスイングをしてしまう傾向があった選手なので、変化球や、厳しいコースに対応し切れない場面が見受けられていました。

 しかし、現在の打撃フォームは端的に表現するならば“体を開かずに”打ちにいけています。それが、ここまで数字を残すことができるようになった要因だと見ています。また、打席での球の見逃し方も良い形です。苦手な球に対してはカットして逃げることができているのも打率が残せている要因でしょう。このように良い形で打撃を表現できているのも。これまで苦しんできた数々の経験を自分のものにできているからだと思います。

 守備面では最近は一塁、外野に加えて再び三塁も守っていますが、三塁手と一塁手は基本的な動きが違います。一塁手は捕球が最大のポイントですが、三塁手の場合捕球した後に送球をしなければなりません。堂林選手は以前であれば『送球に難有り』という判断を下されていた時期もありました。

 そういう部分を考えると、三塁手というポジションがどれだけ打撃に影響を与えるのか? という不安もありますが、彼も経験を積んできているだけに楽しみな気持ちもあります。打撃同様に、守備面でも苦労を重ねながら経験を積んできているはずです。三塁だけを守っていた8年前とは違い、複数ポジションを守れることも今の強みとしてほしいですし、守備面での貢献にも注目したいですね。

 今後の堂林選手についてですが、もちろん良い成績を残してほしいですが、まず一番はケガなくシーズンを過ごしてほしいということです。唯一無二のスター性を持った選手だと思いますし、そこが彼の最大の魅力といっても過言ではありません。彼が活躍することで、チームに勢いが出ている感じもしますし、序盤に残してきた成績を自信にして、レギュラーを確実なものにするため、どんどん前へ進んでいってほしいと思います。