豊富な日本代表経験を持ち、日本人ビッグマンとして大きな期待を集める新星がいる。プロキャリア2年目にして、初のB1の舞台へとステップアップを果たした市川真人だ。厳しいポジション争いのなか、迷いなくシュートを放つ若きビッグマンの足跡と今シーズンの目標について話を聞いた。(全2回/第1回)
◆2メートル超えのビッグマン!代表での出会いも加入の決め手に
─身長206センチと非常に長身の市川選手ですが、まずはバスケットボールを始めたきっかけを教えてください。
「バスケットボールを始めたのは小学2年生の頃です。家族も背が高く、僕自身もその頃から145センチくらいあったので、周りの友達からいろいろなスポーツに誘われることが多かったんです。ただ当時は、体格は大きいのですが『月に1回風邪をひく』といった調子ですごく体が弱くて……。スポーツをすれば体力がつくかなと思って始めたのが、バスケットボールでした。本格的にプレーするようになったのは、中学生からです」
─それだけ身長が高くて体格が良いと、周りも放ってはおかないですね。プロを目指すようになったのはいつ頃からですか?
「明確に『プロになりたい』と思うようになったのは高校生の頃です。ありがたいことに、その頃からアンダー世代の日本代表に呼んでもらうことが増えてきました。同時期に出場した東海地区の大会でチームがベスト8に入り、僕自身が30得点した試合がありました。そうした代表活動や地区でのプレーをスカウトの方が見に来てくれていたと聞いて、自分がプロの世界でどれだけ通用するのかを試してみたくなりました。特にUー22の日本代表に招集された時は、周りにプロを目指す大学生がたくさんいる環境でした。僕自身、もっとやりたい、チャレンジしたいという気持ちになったのが、高校2年生くらいの時だったと思います」
─大学は白鷗大に進学され、そこからまずはB2のベルテックス静岡からプロキャリアをスタートされました。大学とプロの差を感じることはありましたか?
「学生時代は、コーチ陣が先にアクションを起こしてくれることが多かったのですが、プロの世界では自らアクションを起こさなければ、なかなか周りに協力してもらえないということは感じました。プロに入ってから、自分からアクションして、周りと積極的に喋ることが増えたと思います。プロの方が、自分からアウトプットして、コーチや周りからのフィードバックを受けるというコミュニケーションが圧倒的に多いという印象です」
─2024年に広島に加入されましたが、きっかけは何だったのでしょうか。
「まずは僕自身、B1でプレーしたいという思いがあったことが大きかったです。広島の選手、特に外国籍の選手は本当にレベルが高いので、チームメートとしてプレーすることで、僕自身の勉強にもなります。選手として経験値を積んでいくことを考えた時に、広島はすごく魅力的だと感じました。それから、僕は2023年に開催された杭州アジア大会(中国)で日本代表に選んでもらったのですが、そこで寺嶋(良)さんと一緒にプレーすることができました。宿舎も同室で、広島というチームについていろいろ教えてもらいました。寺嶋さんの人柄もすごく素敵で、プレー面でも的確なアドバイスがもらえますし、コート外でもすごく良くしてもらったんです。寺嶋さんとの出会いも、広島加入を決めた一つの決め手でした」
─広島に加入して、市川選手のなかで成長の手応えのようなものはありますか。
「自分の武器であるスリーポイントシュートは、外国籍の選手たちに比べても負けていないという自負はあります。一方で彼らは体が強く、ディフェンスとリバウンドの技術が非常に高いんです。この差を埋めていかなければ、チームのローテーションに加わることは難しいのではないかと実感しています」
─チームメートとしてプレーするなかで勉強になる面もありつつ、差を感じてしまうこともあるんですね。
「そうですね。『果たして自分は彼らに敵うんだろうか』とネガティブになってしまうこともあるのですが、周りの選手たちがみんな優しく接してくれますし、同じポジションの選手が自主練習に付き合ってくれたりもするので助けられています。ニック・メイヨ選手は日本語が少し話せますし、僕も英語が少し話せるので、試合前の練習時にコミュニケーションを取ることも多いですね。外国籍の選手たちにも助けてもらっているなという感じです」
(後半へ続く)