スポーツ界にはアスレティックトレーナーという職業が存在する。スポーツ中のケガを予防したり、コンディショニングをしたりと、選手が良いパフォーマンスを発揮できるよう、サポートを行うプロである。

 2020年、横浜DeNAベイスターズにアスレティックトレーナーとして入団した林優衣さんは、この春「KOROMO Athletic Training」という施設を立ち上げる。今回はアスレティックトレーナーになるまでの林さんの姿に迫る。

横浜DeNAベイスターズのアスレティックトレーナーを担当していた林優衣さん

 2020年から2022年までの3年間、横浜DeNAベイスターズのアスレティックトレーナーを担当していた林優衣さんは、小学生から野球に親しみ、中学生ではソフトボールをプレーしていた。高校進学後は、野球部のマネージャーとして活動する中で、将来、スポーツ業界で働きたいという意思が芽生えたという。ただ、他にも薬剤師、マネージメント職、ファイナンシャルプランナーなど、携わりたい仕事が多岐にわたった為、高校2年の冬に、大学進学に向けて進路を考える『オンライン適職診断』を受けたことが大きな転機となった。

 『適職診断』の結果、スポーツ関係の職に就くことが適性として示された林さんは、実際にスポーツ関連職に関するセミナーに足を運んだ。国内の大学や専門学校に関する説明を一通り受けた後、米国で『BOC-ATC』という世界最高レベルのアスレティックトレーナー資格の取得を目指すコースがあると提案され興味を抱いた。今となっては「営業トークに乗ったのが良かったですね」と笑うが、そこからの道のりは決して平坦なものでなかった。

 アメリカに渡り、“NPBの世界で働く”という確固たる目標を持っていた林さんは、アメリカの高校野球の現場で実践経験を積み、北海道日本ハムファイターズのインターンに参加した。その後、横浜DeNAベイスターズに就職するが、その入口は球団オフィシャルサイトの『問い合わせフォーム』から履歴書を送ったというから驚きだ。アメリカに行っても『NPB』というこだわりがあったのは、「アメリカの野球よりも、日本の野球が好き」という林さんの思いが大きく、この点は彼女のトレーニング観にも表れている。

 “女性初”のNPBアスレティックトレーナーという部分が取り上げられることが多いが、アメリカでは選手もスタッフもそれぞれひとりのプロフェッショナルであるという意識が強く、それが林さんの中にしっかりと根付いている。しかし、日本ではまだ、性別の壁や、チーム内の上下関係が存在するなど、課題も多いとされている。それだけに幾多の壁を越えてきた林さんの姿、言葉には強いエネルギーが詰まっているのではないだろうか。

 次回は、林さんの今後の取り組みに迫る。

【プロフィール】
林 優衣(はやしゆい)
1994年5月4日生まれ 大阪府出身
University of Nebraska at Kearney 修士卒
北海道日本ハムファイターズ ストレングス&コンディショニング(2019※インターン)
California Winter League Baseball アシスタントアスレチックトレーナー(2020)
横浜DeNAベイスターズ ストレングス&コンディショニング担当(2020-2022)
茨城ロボッツ ヘッドアスレチックトレーナー(2023-2024)
KOROMO ATHLETIC TRAINING 代表(2025-)