いよいよ間近に迫った2025年シーズン開幕戦。開幕投手は森下暢仁に決まり、オープン戦では若手選手たちが激しいポジション争いを演じている。チーム内のし烈な競争を勝ち抜き、開幕一軍メンバー入りの切符を手にするのは誰か。カープOB・大野豊氏が自身の経験ともとに、開幕に向かう心構えを独自目線で解説する。

初の開幕投手に指名された森下暢仁

 『1/143』以上の重み。初の開幕投手は森下暢仁に決定

 この季節になると話題に上がるのが、各球団の『開幕投手』です。私は現役時代、3度開幕投手を務めさせてもらいましたが、先発投手としてプロの世界でプレーするのであれば、開幕投手を任せてもらえるのはとても名誉なことだと感じていました。1シーズンは143試合あるわけですが、開幕戦は単に『143試合のうちの1試合』というだけではありません。特に重みがあり、重圧もあるのが開幕戦です。

 シーズンの初戦ですから、そこでチームを勝たせ、そして自分も勝てるという形で良いスタートを切りたい。自分の投球によって、「今年はいけるぞ」とチームに弾みをつけるような内容にしたいという思いは当然ありますし、名誉でもあり、責任も感じるというのが開幕投手独特の気持ちなのではないかと思っていました。

 実は私は、1998年に三村(敏之)監督から3度目の開幕投手に指名された時、一度は断ろうとしていました。

 私にとって開幕投手とは、1年間ローテーションを守り、数字も残すことのできる投手です。当時、私は42歳という年齢でしたし、チームには自分よりも若い投手が何人もいました。そのなかで年長の私が開幕投手をやっているようでは、カープは優勝できない。そう感じたのです。ただ、三村監督から言われたのは「大野が投げて、もちろん勝ってくれることがベストだけれど、仮に負けたとしてもお前なら周りが納得するんだ。だからお前に任せたい」という言葉でした。非常にありがたいと感じると同時に、身の引き締まる思いがしたことを覚えています。

 勝つことはもちろん大前提ですが、やはりチームや周りが納得する投手が開幕のマウンドに上がる。開幕投手には、そうしたことも必要なのではないかと感じています。

 今のカープには開幕投手は森下暢仁に決まりました。森下にとっては初の大役です。「自分が投げて、勝たせるんだ」という思いでこの先に挑戦していってもらいたいと思います。