そして2020年、空席となっていた守護神の最有力候補として名前を挙げられていたフランスアだったが、オープン戦・練習試合では失点を重ねその座を新外国人のスコットに譲ることとなった。

 波乱の守護神事情を反映するように、2020年のカープは開幕から勝ちきれない戦いが続き低迷。その原因は3連覇中のような勝利の方程式が確立し切れないことが大きく影響しているだろう。新戦力を待望した首脳陣はチームの新陳代謝を促すべく手段を講じたが、それでもチームは効果的に機能せず、開幕から1ヶ月間はチームとしての受難の時間を強いられた。

 しかしフランスアの復調と共に、状況は徐々に好転しつつある。

 開幕直後は要所で失点していた左腕だったが、7月21日の阪神戦から6試合連続で無失点登板を記録。7月29日の中日戦ではセーブシチュエーションで起用されると、3奪三振で試合を終了させる完璧な投球を披露した。

「自分としてはサファテ(ソフトバンク)のような投手になりたいです。彼のように9回を完璧に抑えるような投球はできていませんが、いつかはあんな投手になりたいです」

 かつて“理想のストッパー像”という質問に対して、上記のように返答したフランスア。直近の試合で見せている“剛球”は、背番号97に守護神の資質が備わっていることを改めて周囲に印象付けたに違いない。

「自分はドミニカ共和国という暑い国から来ていますから、夏は一番好きな季節です。特に体力が落ちることはありませんし、コンディション面でも一番調整しやすい時期です。月間18試合に登板したのも8月でしたしね」

 盛夏を乗り切り、再浮上していくためには、この男の力が必要不可欠だ。