2024年育成ドラフト3位でカープに入団した大卒キャッチャーの安竹俊喜。静岡高時代は控え捕手、高校卒業後は1浪を経て静岡大に進学した苦労人だ。紆余曲折の末、プロ入りを実現させた23歳のルーキーの素顔に迫る。(全2回/第1回)
◆毎日必死だった。人生初の練習量をこなしたキャンプ
ー安竹選手にとってプロ1年目のシーズンですが、ここまでプロの世界を体感してみて、率直に現在の思いを聞かせてください。
「キャンプは、『プロのメニューはこんな感じなんだ』と体感しながら、そこに慣れていく期間だったと思います。もちろんプロの世界ならではのきつさやしんどさもありましたが、それよりも、『プロとはこんな世界なんだ、こんな感じなんだ』と慣れる期間だったと思っていました」
ー大学時代とのギャップを感じた点はどんなところでしょうか?
「静岡大時代はコーチもトレーナーも監督もいないなかで、野球部の他の部員たちと話し合い、自分たちで練習内容を決めていました。食事やトレーニングも各自でやっていたので、こうして大野寮に入って、チームメートと一緒に寝起きして、食事をして、練習をして……という生活をするのが初めてなんです。ここは練習場がすぐそばなので、時間を無駄にすることなくトレーニングを積むことができてすごく充実していますし、良い環境だなと思っています」
ー大学時代は、時間的なロスを感じる部分もあったのですね。
「そうですね。大学の頃は自宅から学校まで40分くらいかけて通っていたので、朝も早めに起きなければいけませんでしたし、野球部の練習が終わったらまた少し離れたジムまで車で移動して……という生活でした。移動に時間がかかるので、合間に自宅に帰ることもあったのですが、そうすると気持ちがいったん切れてしまうんです。つい、横になってしまったりとか(苦笑)。そういうところで時間を無駄に使ってしまっていたなと感じていたのですが、大野寮ではもちろんそういうことはなくて、寮のなかですべて完結できるのが大学とは一番違う部分で、充実しています」
ー先輩選手と一緒に練習をこなしていくわけですが、プロのすごさを感じることはありましたか?
「キャンプで先輩たちに混じって練習をする機会がありましたが、特に打撃面ですごみを感じました。自分はプロに入る前から守備にはある程度自信があったのですが、打撃はずっと課題だと言われてきました。先輩たちの打撃を間近で見たことで、もっともっと頑張らなければいけないと改めて感じました。ただその反面で『思った通りだ』とも感じました」
ー『思った通り』とは、具体的にどういうことでしょうか?
「もちろん入団したばかりの僕とプロの世界で何年もプレーしてきた先輩方の差は非常に大きいのですが、改めて『自分はこんなものだよな』と感じたというか、『やっぱり、今の自分の技術では足りないな。先輩に比べると、もっともっとやらなければいけない』と改めて思いました」
ー特に印象的な選手はいましたか?
「一軍選手と一緒にプレーする機会はあまりないのですが、二軍で一緒に練習をしてきたなかでいうと、育成のラミレス選手の打撃はすごいです。飛ばす力が、僕の2倍くらいあるんじゃないかと思います。他の選手も、打球を芯で捉えるところや、質の良い打球を飛ばせるところなど、すごいと感じるところはたくさんあります。自分はファウルなど質の悪い打球が多いので……。いまはとにかく追いつけるようにと思って取り組んでいます」
ーここからはこれまでの安竹選手についてをお伺いします。プロを目指すようになったのはいつ頃からでしたか?
「大学2年の全国大会が終わったあたりです。2年の春に静岡学生野球春季リーグで優勝し、東海地区の春季選手権大会に出場しました。そこで優勝し、8年ぶりに全日本大学野球選手権大会に出場したのですが、その大会が終わったころからプロを目指そうという思いになりました。ただ、『絶対にプロに行くんだ』というよりも、『プロのレベルを目指してやってみよう』という感覚だったと思います」
(後編へ続く)