1試合の勝敗で、大きく順位が変動する今シーズンのJ1リーグ。サンフレッチェ広島は4月に4連敗を喫するなど苦しんだが、5月に入ってからは5連勝(5月26日時点)と上昇気流に乗っている。ここではサンフレッチェ広島OB・吉田安孝氏が、待望のゴールをあげた選手たちに触れていく。(全2回/第1回)
◆欲しかった選手に得点が生まれた福岡戦。劇的勝利で上位へ浮上
4月12日の岡山戦から29日の新潟戦にかけ、サンフレッチェは2019年以来となるリーグ戦4連敗を喫してしまいました。
ケガ人が増えてチーム力がやや落ちていたことも大いに影響していたと思いますが、その後の福岡戦 (5月3日、◯2−1)を見ていて感じたことは、なかなか勝てなかった期間は 『縦への意識』、『裏への意識』の部分に違いがあったのではないか、ということでした。
サッカーで点を取るためにベストなのは、シンプルにゴールに直結することです。相手としても、縦に飛んでくるボールや縦に突っ込んでくるプレーは脅威に感じられるものです。そういう意味でもやはり、得点をあげるためにはゴールへの直線的な意識が大事なのだと思います。
連敗が続いていた期間は、どうしても『サイドに出してクロスを入れては跳ね返される』というパターンが多かったように思います。もちろん、サンフレッチェの強みはサイド攻撃ですが、サイドが生きるのは、縦への意識があってこそです。その点、福岡戦では改めて縦への意識が現れたと感じましたし、ボックス内にしっかり人数をかけることもできていたように見受けられました。
また、福岡戦では2得点ともジャーメイン良が起点になっていたことにも注目したいと思います。
1点目は潰れ役になり、こぼれたところを加藤陸次樹が持ち上がって素晴らしいシュートに結びつけました。2点目は、ジャーメイン自身がペナルティエリア手前まで運び、パスを送った中村草太が相手に倒されてPKを獲得しています。アディショナルタイム終了間際のプレッシャーがかかる場面で、しっかりとPKを決めて決勝点を挙げたのもジャーメインでした。彼はこの試合の53分にも、前田直輝からの縦パスに反応して裏へと抜け出しシュートを放っています。これはオフサイドとなりましたが、FWの心理としては、たとえオフサイドと分かっていても 『プレーのなかでゴールネットを揺らしたい』という思いがあったのだろうと思います。
(後編に続く)