2024年シーズンは、深刻な得点力不足に泣いたカープ打線。今季、優勝を目指す上で攻撃力アップは必須だ。チームは6月上旬の時点でチーム打率はリーグ上位を推移する。『変化』を掲げる新井カープにおいて打撃陣の変化とは。朝山一軍打撃コーチに現状を聞いた。(全3回/第1回)

朝山東洋一軍打撃コーチ

昨年足りなかったのは長打力。打撃練習では質より量

─昨シーズン、カープ打線は得点力が課題となりましたが、打線をどのように捉えていましたか?

 「やはり、一番足りなかったのは、長打力だと感じました。カープは点が取れないと言われていましたが、球界全体が投高打低と言われていました。その状況のなかでも、他チームの得点の奪い方を見ていると、ランナー一塁の状況で長打が出たり、ホームランなどで得点することがありました。その点で言えば、カープは単打は出るのですが、点が取れない。そういう状態だったと思います」

─打線の課題解消に向けて、秋と春のキャンプでは、野手陣の振り込みが行われていました。

 「監督と話をしていましたが、やはり現状として力がないから結果として数字が出ていないと。極論、シーズンでホームラン3本しか打てない選手が、練習をしていきなり30本打てるようになることは難しいことです。ですが、ホームラン0本の選手が3本打てるようになる、5本の選手が10本打てるようになるには、練習しかありません。そしてスイング力です。これは数字として明確になるものですし、スイングスピードが速い選手は、打球も飛びますからね」

─朝山コーチの現役時代は厳しい練習が当たり前の時代でした。

 「僕らのときはもちろん時代もあったと思います。ですが、特に若い選手に関してはある程度、質より量を求めてやることが大事だと思います。今は動画などでいろんな情報を得ることができます。それも大事なことですが、結果として出ていないならば、練習をやらなければいけないと力はつかないと改めて感じるところがありました」

─量をこなす中で、質の部分についてはいかがでしょうか。

 「量を増やしても、間違ったスイング軌道では上達しません。チームにはアナリストが入っていますので、彼らから出てくる数値的なものを参考にしながら、良いスイング軌道に近づけていく、ということはキャンプで行ってきましたね」

─キャンプでは、連日ロングティーが導入されました。この方針について聞かせてください。

 「フリー打撃、試合の球など、打者の前から来る球は、相手主導ですし、どうしてもバットに当てるために合わせにいったり、打者はなかなか自分の形で振れないケースがあります。ただ、ロングティーでトスをあげる程度であれば、打撃の形を意識できますし、全球を全力で振ることができます。ですので、振る力、体力、技術も含めて、やった分だけパフォーマンスが上がっていきます。僕らも現役時代にやりましたが、やはりロングティーが一番きつい練習でした(苦笑)」

─その練習の効果をどのように感じていますか?

 「特に即効性があるわけでもないので、やはり継続して振っていくことで、本当の力がついてくると思っています。やり続けることで年々強くなっていきますし、特に若い頃からこの練習をやっていれば、20代中盤から後半の体が一番出来上がってくる時期にベストパフォーマンスが出やすくなると思います。今チームには若い野手が多いですし、キャンプで行ったことを継続することが大事になると思います」

─若い選手を指導される中で、朝山コーチが伝え続けていることはあるのでしょうか。

 「一軍にいることが目標なのか、レギュラーを取ることが目標なのか、プロ野球選手としての目標は何なのかということですね。やはり結果を出してきている選手は、たくさん苦しんで、たくさん練習をしていますからね」

(中編に続く)