4月に4連敗を喫するなど苦しんだサンフレッチェ広島だったが、5月に入ってからは5連勝、順位も3位(5月28日時点)に上昇するなど好調を維持している。ここではOB・吉田安孝氏が、ターニングポイントとなった2試合を中心に、5月のサンフレッチェ広島を解説する。(全2回/第2回)

俊足を活かしてペナルティエリアに侵入し、2戦連続でPKを獲得した中村草太

迷いを断ち切った中村草太が、持ち前のスピードで勝利を演出

 5月の試合を振り返ると、福岡戦(5月3日)、そして湘南戦(5月7日)はいずれも決勝ゴールがPKでした。このPKを獲得したのが中村草太です。

 彼は今シーズン、明治大からサンフレッチェに加入し、デビュー直後は非常に好調なプレーを見せてくれていました。ただ、好調だからこそすぐに対策されてしまい、チームも苦しいなか、中村自身も悩んだ時間があったのではないかと思います。

 福岡戦、湘南戦を見ていると彼本来の良さであるスピードや裏を突く動きを活かした仕掛けで、PKをもらうことができていました。福岡戦で勝ち取ったPKは、相手が中村の持つボールを奪おうと足を出したのですが、中村のスピードが上回ったために引っ掛けてしまった形となり、結果として広島のPKになりました。これは中村のスピードがあればこそ可能だったプレーであり、PK獲得だったと思います。中村自身が試合を通して悩むなかで、 『自分の良さをどうすれば発揮できるか』を考え抜いた結果が実った2試合だったのではないでしょうか。

 湘南戦では試合開始から早い時間にPKで先制し、相手に押される時間帯がありながらも最後まで1点を守り抜きました。これはベテランの3バック、GKも含めた守備の選手たちのプレーが大いに効いていたと思います。試合内容としては非常に重たい展開にはなりましたが、佐々木翔、荒木隼人、塩谷司らが相手をほぼ跳ね返し、大迫敬介がゴールを守り切って勝ち切ったこと。何よりも、この試合を落とさなかったことが非常に大きかったと思います。

 この湘南戦と、続くG大阪戦 (5月11日、◯1−0、パナソニックスタジアム吹田)は、内容としては課題のある試合だったかもしれません。

 サンフレッチェらしいサッカーかと言われると、これまで勝てなかった試合のなかでももっと内容の良かった、ワクワクできる試合もありました。ただ、ここから優勝を目指していくためにも絶対に落とすことのできない試合で勝点を積めたのは、これから先のシーズンにとって大きなプラスになったことは間違いありません。

 まだまだシーズンは続きます。ここからはルヴァン杯、天皇杯も始まりさらに過密な試合日程になることが予想されます。

 苦しい4月を乗り越え、5月に5連勝を成し遂げた選手たちが、ここからよりワクワクする試合を見せてくれることに期待したいと思います。