1日午後から行われた記者会見で辞意を表明した緒方孝市監督

「これが自分にとって最後の大きな仕事」

14年10月15日、冒頭のコメントと共にカープに新たな監督が就任した。2年連続でクライマックス・シリーズに進出するなど、上昇の兆しを見せていたチームの指揮を託されたのは緒方孝市。09年の引退後は一軍の打撃コーチ、守備走塁コーチ、野手総合コーチを歴任し、満を辞しての監督就任だった。

「常に勝負に徹していて選手に対する厳しさもあった」と故三村敏之氏を理想の監督像に置き、ストイックな姿勢で指揮を執り続けた。“投手陣を中心とした守りの野球”を標榜し、接戦に持ち込んだときに勝ち切るチームを常に追い求めた。

「自分自身は監督といっても“組織の中での監督という役割”を全うしていくだけです。監督だからといって、『チーム全体のことをやるのか?』といえばそうではありませんから」

確固たる信念を持ってチームを統率し、在任中に球団初となるリーグ3連覇を成し遂げた。しかし、今季は開幕直後から逆風が吹き荒れた。『1378日ぶりの最下位』『延長戦史上最多の12失点』『球団初の開幕5カード連続負け越し』……。5月に驚異の巻き返しを見せたものの、交流戦以降は再びチーム状態が急降下するなどシーズンを通じて安定感を見せることができなかった。

「チームの勝敗の責任は監督にある。こういう形になり、一生懸命頑張ってくれた選手、コーチ、そして何よりもファンの方々に申し訳ない」

これは昨日、4年ぶりの4位が確定した直後の緒方監督のコメントだ。そして一夜明けた10月1日、ついに自らの口で監督辞任を表明した。就任5年間でリーグ優勝3回、4位2回、巨人戦5年連続勝ち越し。さまざまな声も聞かれたが、実直な姿勢を貫き球団史に残る黄金期を築き上げた。

87年に入団以来、カープ一筋33年のプロ野球人生。闘将と呼ばれた第19代監督が、静かに赤いユニホームに別れを告げた。