オリックス・ブルーウェーブ(現オリックス・バファローズ)、MLBワシントン・ナショナルズのトレーナーを務め、メジャー時代は「マック(高島の愛称)はゴッドハンドを持っている」と高い評価を得たトレーナー・高島誠。この連載では、数々のプロ野球選手を指導してきた経験をもとに、これまで公では語られることのなかった、マック流・野球パフォーマンスアップの秘密を披露していく。

今注目される武田高校の「50分練習」

 野球専門のトレーニングジム「Mac’s Trainer Room」代表の高島誠です。『Mac高島の超野球塾』の連載をご覧いただき、ありがとうございます。

 今回は、僕がトレーナーとして関わっている武田高(広島県東広島市黒瀬町)・野球部の話をしたいと思います。ご存知の方も数多くおられると思いますが、武田高は、8月に行われた夏季広島県高等学校野球大会で、春・秋の県大会を含めて、初のベスト4に進出しました。

  以下、今回の大会の成績です。

<武田高校の試合結果>
2回戦:武田 17-1 明王台(5回コールド)
3回戦:武田 9-3 沼田(規定で7回終了)
4回戦:武田 7-0 国泰寺(7回コールド)
準々決勝:武田 15-3 瀬戸内
準決勝:広島商 5-3 武田

 準決勝で惜しくも広島商高に敗れましたが、互角の戦いで名門高校をあと一歩のところまで追い込む戦いをみせてくれました。

 その武田高校の練習方法には大きな特徴があります。それは、放課後の野球部の全体練習時間が「50分」しかないということです。

 練習終わりに補習授業を行う関係上、50分という短い時間でしか全体練習ができないのです。強くなるためには、長く練習することは避けられないという声も多いなか、50分というのは、ある意味、野球界の常識を覆す練習時間ではないかと思います。

 現在チームの指揮をとっている岡嵜雄介監督は広島商高時代の後輩です。そのご縁もあり、トレーナーとして声をかけてもらいました。野球部の技術練習メニューやトレーニングメニューを考える一方で、LINEのグループを使ってミーティングに参加したり、各選手からの相談にLINEでアドバイスをしています。

 武田高の練習は、トレーニングと技術練習を行う日に分かれており、『ウエイトトレーニング』、『瞬発系トレーニング』、『身体操作トレーニング』、『技術練習』の順番で行われています。トレーニングの日は、僕が考えたメニューに50分間全員で取り組んでもらいます。

 また、トレーニングの数値はすべて記録し、個人の数値はもちろん、チームとして数値が上がっているかもチェックしています。数値を見れば、選手の能力が上がっているかどうかは一目瞭然。数値が上がれば間違った練習をしていないということですし、下がっていれば何が間違っているのかを見直していきます。

 数値は2週間に一度のペースで定期的に測っています。考えとしては、勉強の小テストと同じような感覚ですかね。早いサイクルで行なったほうが問題点も出やすいですし、あまりにも数値が悪かったら早く改善策を考えるようにしています。

 練習時間は50分しかないので、走り込みや投げ込み、フリーバッティングといった練習を武田高校で行うことはできません。50分のなかで本当に必要だと思う練習を突き詰めて行っています。その一つが上記に挙げたようなトレーニングです。素振りなどの技術練習は自主練習で行う子は多いですが、トレーニングは正直サボる子が多いのです。そのため、全体練習の時間を使って行うようにしています。