50分練習を行う上で必要な心構え

 トレーニング指導をする際に心がけていることは、数値をもとに情報を与え、そのヒントをもとに、どうやったら能力が向上するかを考えるように促すことです。野球のトレーニングに正解はありません。可能な限りのアドバイスを与えて、それぞれに考えてもらう仕組みをつくっています。

 武田高で行うトレーニングも、こちらがメニューを決めているトレーニングと選手自身が考えて行うトレーニングがあります。先ほど紹介したウエイト・瞬発・身体操作の3つの項目は必須メニュー。これだけは最低限こなしてほしいというものです。

 僕が言っていることを選手が理解してくると自然と質問が出てきます。質問が出てくればより深い話ができて、オーダーメイドのメニューを考えることができます。それが選手自身で考えて行うトレーニングとなります。

 トレーニングを中心に話をしてきましたが、武田高のように限られた時間で、技術練習やトレーニングをするうえで、大事にしてほしい考えがあります。

 それは“準備”に対する考え方です。練習時間が長いチームだと、授業で疲れているだけに、ついつい時間をかけて着替えたり、ウォーミングアップも練習が始まってから行うケースが多いです。ただ、武田高校は50分しか練習時間がありません。ウォーミングアップにかける時間も少ないので、5時間目や6時間目の休憩時間で体を動かすなどして、練習開始から100%で取り組める、しっかりとした“準備”が必要です。

 例えば、今年の自粛期間に武田高の選手に課していたトレーニングに、36分間で行うトレーニングがあります。20秒動いて40秒のインターバルで1セット。これを36セットやるのですが、ここで大事なのは、いかに集中して36分間を最大限使うことができるかということ。そのためには、練習のための準備をきちんと行い、100%の状態で練習に取り組むことが大切です。実際、自粛期間中にしっかりとトレーニングをこなした選手は、投手であれば球速が上がるなど、能力値がグッと向上していました。

 36分間トレーニングはYouTubeで公開していますので、興味がある方はぜひチャレンジしてみてください。

家でも出来るトレーニング「マックプロトコル」
庭・公園でも出来る「マックプロトコル」

 次回のコラムでは、僕が考える50分練習のメリット・デメリット、そして50分練習を通して、どんな選手に育っていってほしいかをお話ししたいと思います。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

高島誠(たかしま・まこと)
広島県東広島市の西条町にある、野球専門のトレーニングジム「Mac's Trainer Room」の代表。オリックス・ブルーウェーブ(現オリックス・バファローズ)、MLBワシントン・ナショナルズのトレーナー経験があり、現在も数多くのプロ野球選手とトレーナー契約を結んでいる。趣味はパルクールとサウナで、サウナ・スパスペシャリストの資格も持つ。野球トレーニングのオンラインサロンの運営、【英語】x【身体作り】x【野球】がテーマの中学硬式野球チーム「東広島ポニー」に携わるなど、様々な分野で活躍。「Mac's Trainer Room」のYouTubeチャンネルでは、野球トレーニングに関する動画を公開中。
Twitter YouTube