1993年の創刊以来、カープ、サンフレッチェを中心に「広島のアスリートたちの今」を伝えてきた『広島アスリートマガジン』は、2025年12月をもって休刊いたします。32年間の歴史を改めて振り返るべく、バックナンバーの中から、編集部が選ぶ“今、改めて読みたい”記事をセレクト。時代を超えて響く言葉や視点をお届けします。 

 第1回目の特集は、黒田博樹のインタビューセレクション。

 広島とニューヨーク、ふたつの街に愛された男、黒田博樹。揺るぎない信念と覚悟を胸に、日米で活躍したその足跡は、今なお多くのアスリート、ファンの心に残り続けている。過去、広島アスリートマガジンに掲載された独占インタビューを再構成し、黒田博樹さんの言葉に込められた思い、生き様を改めて紐解いていく。

 2009年、メジャーで日本人3人目となる開幕投手を務めたものの、左脇腹の負傷、そして頭部への打球直撃など故障に悩まされた。黒田がチームを去った同年にユニホームを脱ぎ、野球解説者として活動していた佐々岡真司氏との対談(2009年オフ)では、ドジャース契約最終年を迎える身として、カープ復帰にまつわる率直な思いを語っていた。

対談を終え、佐々岡氏と笑顔で握手を交わす黒田博樹(写真は2009年撮影)

言葉やボールの違い。今なお続く試行錯誤

佐々岡 クロ(黒田)の投球を見ていると、基本的には横の揺さぶりでシュート系が多かった印象があるね。

黒田 フォークが使えれば、もっと良かったんでしょうけどね。ボールの感覚の違いでフォークが落ちなかったりすっぽ抜けたりして思うように使えなかったんです。それがシーズンでしんどかった理由だと思います。まぁ佐々岡さんのようなカーブが投げられればいいんですけど、カーブに関してはセンスがないので(笑)。でもチェンジアップやカーブなどを投げて緩急をつけたいとは思っているので、いろいろトライしていきたいと思います。

佐々岡 新たな球種を増やそうという考えはある?

黒田 何か新しい球種を覚えられれば、(投球の幅も)広がるかなと思います。ただ、09年のシーズンで苦しかったのは、スライダーの曲がりが早く大きくなってしまったからというのもあったんです。そういう面ではスライダーを良くしていかないといけないという思いもあります。

佐々岡 2009年は史上3人目となる日本人開幕投手となったけど。

黒田 自分の中ではもっといろんなプレッシャーを感じて緊張するのかなと思っていたんですけど、カープで何回かやらせてもらっているからか、そこまでプレッシャーを感じずに入っていけたんじゃないかなと思います。

佐々岡 厚い信頼を寄せてくれているトーリ監督はどんな人?

黒田 見た目もそうなんですけど、迫力がある人。でも怖そうな印象を受けますが、僕ら日本人に日本語で話しかけてくれるなど気を遣ってくれる人ですし、采配ひとつとってもベンチで見ていてすごく勉強になる監督だと思います。

佐々岡 自分も喋ったことがあるけど、オーラがあるというか。怖い顔をしているんだけど、話していたら本当に優しい人で、テレビで見るイメージとは全然違うなと感じた。ただ信頼してくれた監督だったからこそ、期待に応えられなかった分、悔しさもあったんじゃないかなと思う。

黒田 そうですね。特にプレーオフ前にケガをしてディビジョンシリーズで投げられなくて。それでリーグチャンピオンシップにぶっつけ本番の覚悟で投げるつもりで、アリゾナで調整登板していたら、わざわざプライベートジェットで来てくれましたからね。それでも期待に応えられなくて(リーグチャンピオンシップ第3戦に登板も2回途中6失点で敗戦)残念でしたけど、この監督のために何とかしたいなと強く意気に感じさせてくれる方だと思います。