組織論・戦略論 などの視点から、近年のカープの強さ・魅力の秘密を紐解いていく、広島アスリートマガジンwebでしか体感できない講義・『カープ戦略解析室』。案内人は、高校野球の指導者を20年務め、現在は城西大経営学部准教授として教鞭をとるなど多彩な肩書きを持つ高柿健。10回目の今回は、背番号18を受け継いだ、ドラ1右腕・森下暢仁選手を取り上げる。

 

◆期待値を超える新戦力

 プロ野球のチーム力の差を大胆に表現するならば、51対49の差といっていい。このわずかな差が、1試合ごとの勝利と敗北という結果につながり、その積み重ねによりシーズンの順位が決定する。

 高校野球が一発勝負のトーナメント戦であるのに対しプロ野球は年間の勝率で勝者を決める。優勝チームでも勝率が6割強であることを考えても、プロ野球チームの力は比較的拮抗していると言うことができる。

 2020年8月21日からの首位・巨人との3連戦でカープは3連勝した。打撃戦と投手戦が入り混じった勝利の内容からみても、今季のカープは上位チームと勝負できない戦力ではないと感じさせる3連戦だった。

 菅野智之と大瀬良大地、岡本和真と鈴木誠也、複数捕手陣、新戦力の若手野手、そして新人王を争う戸郷翔征と森下暢仁。その他メンバーを比べても戦力は拮抗しており、巨人戦3連勝は決して偶然の結果ではない。

 特に今季のカープの新戦力は決して巨人の新戦力に見劣りしないのではないだろうか。「これぐらいやってくれれば」とする期待値を超えたその活躍がチームを刺激し、相乗効果をもたらしているのだ。その一番手が森下暢仁だ。