◆カープの18番に求められるもの

 カープが巨人に3連勝した直前、2020年8月18日、『ターゲット・フィールド(ミネソタ)』のマウンドで、かつてカープの背番号18を背負った右腕が躍動した。ツインズの前田健太は8回までブルワーズ打線を無安打に抑えたのだ。残念ながら9回に安打を許し、ノーヒットノーランの達成はならなかったが、8者連続三振の球団新記録を樹立する快投を見せた。

 世界で躍動する前田がかつて、カープの背番号18を背負ったのはプロ2年目の2008年からのことだった。

 長きにわたりカープ投手陣を支えた佐々岡真司(現監督)からの背番号18の継承は、当時実績を残していない前田にとっては重荷だったに違いない。しかし、逆にこれをモチベーションに変えた前田は実績を積み上げ、カープのエースへと成長した。

 低迷するカープの結果を背負い、チームのベクトルを再び上向きに変えたのは間違いなく前田の功績といえるだろう。カープの18番には、チームを牽引したエースの歴史が刻まれているのだ。

 2020年、その番号を引き継いだのがルーキー・森下暢仁だ。昨秋のドラフトでは佐々木朗希、奥川恭伸といった高校生投手が注目されたが、カープは即戦力投手として注目されていた森下の単独指名に成功した。

 期待通りに開幕ローテーション入りした森下はルーキーでありながらも先発としての責任と勝利に対する強い執念を口にし、結果を残し続けることで、着実に信頼を積み重ねている。かつての前田がそうであったように、森下も背番号18の重圧をモチベーションに変える資質を持ち合わせていると、その期待感は増すばかりだ。

 カープは津田恒美(1982年)にはじまり、川端順(1985年)、長冨浩志(1986年)、山内泰幸(1995年)、沢崎俊和(1997年)、野村祐輔(2012年)、大瀬良大地(2014年)と数多くの新人王投手を輩出している。

 これまでの投球を見る限り、森下も彼らに劣らずチームの逆境を救う働きを見せてくれると期待したい。