1993年の創刊以来、カープ、サンフレッチェを中心に「広島のアスリートたちの今」を伝えてきた『広島アスリートマガジン』は、2025年12月をもって休刊いたします。32年間の歴史を改めて振り返るべく、バックナンバーの中から、編集部が選ぶ“今、改めて読みたい”記事をセレクト。時代を超えて響く言葉や視点をお届けします。

 第3回目の特集は、カープ歴代エースのインタビューセレクション。

 佐々岡真司、黒田博樹、前田健太——。時代ごとに“エース”の名を背負い、広島のマウンドに立ち続けた男たちがいた。カープのエース系譜を刻んだ投手たちの言葉を、改めて辿っていく。

 150キロ前後のストレートと切れ味鋭いスライダーを武器に、来日1年目にしてカープ投手陣の柱となったコルビー・ルイス。2009年には開幕投手も務めた助っ人右腕は、2年連続の二桁勝利をあげ「神様、仏様、ルイス様」と呼ばれた。しかし、来日までは度重なる故障にも苦しみ、一度は野球人生の終わりも覚悟したという。ルイスが語った自身の軌跡とは。(全3回/第2回)

(『広島アスリートマガジン2008年10月号』掲載記事を再編集)

旧広島市民球場でヒーローインタビューに答えるルイス。隣には西村公良通訳の姿も見える

◆野球人生の終わりを覚悟した大ケガ。乗り越えてつかんだ栄光

── ルイス投手はカープ史上最強の助っ人ではないかという声も挙がっています。それほどの投手になるまでに、どのようなプロセスがあったのですか?

「皆さんがそのように言ってくれるのは本当に嬉しいですね。今の自分の投球ができているのは、いろんな経験をしてきているからです。アメリカのメジャーで投げて、そこから大きなケガをした。それを乗り越えてまたメジャーに復帰して、多くの経験を積んできました。投手にしても野手にしても、試合でいろんなことを経験しない限りは自分自身というものを学べないと思いますし、自分の限界も分かりません。とにかく経験すること。メジャーでも40歳までしっかりとプレーしているモイヤー(フィリーズ)という投手もいますし、クレメンスもまだあれだけの投球をしているのは皆さんもご存じの通りでしょう。

 カープでは(高橋)建さんも39歳ながら彼の中で一番のシーズンと言えるくらいの投球をしています。それは、建さんが今までの経験を踏まえて、自分ができる最高の投球を試合の中で体現できているからなのです。それは私も全く同じで、自分ができる以上のことは期待せず、その範囲内でしっかりと自分の投球をしていくことでいい結果を残せているのだと思います。それ以上のことをしようとしたら、絶対にいい結果には結びつかない。後はいかに早くアジャストできるか。

 例えば試合で投げていて、『今日はあまり良い投球ができないな』と感じた時にどうやって打者を打ち取るか。それはどれだけ早くアジャストできるかということですし、重要なことです」

── お話の中にありましたが、ルイス投手はアメリカでプレーしている頃に大きなケガも経験されました。その中で制球重視の投球に変わってきたということですが、精神的にも変わった部分があるのではないですか?

「自分は2回大きなケガをしています。1回目は若いうちにひじをケガしたんですが、リハビリに取り組んだ後には何とかまだプレーできるだろうという感じでした。ただ、2回目の肩のケガは、正直に言って自分の野球人生が終わりになるのではないかというくらいの大ケガでしたし、心配も落胆もしました。ケガをする前は160キロ近い球を投げて打者を抑え込むという投球をしていたのですが、ケガをしてからは球速がなかなか上がらず、140キロにも満たない球しか投げられなかったんです。

 ただ、それを乗り越えて今はこういう形で投球ができるようになりました。そういう経験の中で、精神的な面でも挑戦しなければいけないものが自分に突きつけられ、それを乗り切ったというのは今でも大きな自信になっています」

── 今季のチームはクライマックスシリーズ進出を争う中で戦い、非常にいい状態にあると感じています。その中でルイス投手も期待を感じていますか?

「シーズン終盤でも開幕の第一戦目でも、期待感というのはマウンドに上がりさえすればどの試合でも同じです。ファンは勝って欲しいという期待を込めて試合を見ていますし、もちろん自分自身もその期待を持って試合に臨んでいます。

 そういう意味ではどんな時期でも1試合1試合勝っていかなければいけませんし、その相手が阪神であろうと横浜であろうと変わりません。自分の仕事をしっかりとして勝ちを重ねていく。私は先発ですので、さっきも言ったようにQSをしっかりとする。それが私に与えられた役割ですし、それを1年間通して最後までしっかりやっていけば、おのずとチームにも自分にもいい結果がついてくるのではないかと思います」

(第3回に続く)