1993年の創刊以来、カープ、サンフレッチェを中心に「広島のアスリートたちの今」を伝えてきた『広島アスリートマガジン』は、2025年12月をもって休刊いたします。32年間の歴史を改めて振り返るべく、バックナンバーの中から、編集部が選ぶ“今、改めて読みたい”記事をセレクト。時代を超えて響く言葉や視点をお届けします。

 第3回目の特集は、カープ歴代エースのインタビューセレクション。

 佐々岡真司、黒田博樹、前田健太——。時代ごとに“エース”の名を背負い、広島のマウンドに立ち続けた男たちがいた。カープのエース系譜を刻んだ投手たちの言葉を、改めて辿っていく。

 2008年、ドジャースに移籍した黒田博樹の穴を埋める投手として大いに期待され入団したコルビー・ルイス。その期待の通り、来日1年目から大車輪の活躍を見せた助っ人は「神様、仏様、ルイス様」と呼ばれ愛された。広島から再びメジャーに返り咲いた右腕が、カープファンと日本への感謝を語る。(全3回/第3回)

(『広島アスリートマガジン2008年10月号』掲載記事を再編集)

カープには2年間在籍。54試合で先発し、防御率2.82をマークした

◆黒田投手のような選手と比べられるのは光栄なこと

── 2008年シーズンの投球を見ていると、残した結果はもちろん、チームに与える精神的な影響でも『エース』と呼ぶのにふさわしい活躍をしています。入団会見では「黒田(博樹)投手の穴を埋めるようにしたい」とも仰っていましたね。

「シーズン当初には『黒田と同じような活躍を期待している』ということを皆さんにも言われました。自分としては黒田投手と自分は違うタイプの投手だと思っていますし、直接的に比べるのは難しいことだと思いますが、黒田という投手はこの球団で何年も期待に応える成績を残してきました。そういう投手と比べられるのはとても光栄なことでしたし、今になって周囲の皆さんに黒田投手と同じくらい、またはそれ以上の投球をしていると言っていただけるのであれば、これ以上ない光栄なことだと思います。

 私もこのチームでできる限り長く、彼が残した足跡を辿ることができれば本当にうれしいですし、ファンにとっても、そして私を獲得したカープのフロントにとっても満足してもらえるのではないかと思います。黒田投手と同じような成績を残すのは難しいことかも知れませんが、同じようなパフォーマンスができていると評価していただけるなら本当にうれしいことです」

── では最後になりますが、日本で暮らしていることについてもお聞きします。8月6日には平和記念式典にも参加されたり、平和記念資料館にも足を伸ばされたと聞きました。また、広島の街を自転車で走っている姿を見たこともありますが、暮らしはいかがですか?

「日本に来て生活習慣の違いなどでたくさん苦労するのだろうと思っていましたが、全然そんなことはありませんでした。本当にスムーズに生活ができていますし、言葉の壁がある以外は、食事にしろ何の問題もなく生活できています。

 広島だけでなく全ての日本人が、本当にいい人ばかりで困っていれば何かと助けてくれますし、自分たちは素直に生活に溶け込むことができました。私は妻と小さな息子がいるのですが、彼らも問題なく暮らすことができています。

 チーム内にも助けてくれる人はたくさんいますね。後は日本にいる間は違う文化というものを勉強しようと思っていろんなことにトライしています。アメリカを思い出して寂しかったり懐かしく思ったりすることもありますが、とにかく日本にいる以上はいろんなものを見て直接経験して、自分のものになればいいと思っています。

 以前に東京に行ったときには浅草の浅草寺にも行きましたし、自分の足でいろんなところに行きたいとも思っています。広島の中でも行けるところがあれば必ず行こうと思っていますし、来年は3人乗りの自転車を買って、家族3人でどこかに行けたらいいなと思っていますよ(笑)」

■コルビー・ルイス
1979年8月2日生、193cm104kg、右投右打
ベーカーズフィールド短大ーレンジャーズータイガースーアスレチックスー広島
力強いストレートとスライダーを駆使し、打者を寄せ付けない圧巻の投球でカープ投手陣の大黒柱に。球宴選手間投票では投手部門で選出されるなど、リーグを代表する先発右腕として活躍した。