1993年の創刊以来、カープ、サンフレッチェを中心に「広島のアスリートたちの今」を伝えてきた『広島アスリートマガジン』は、2025年12月をもって休刊いたします。32年間の歴史を改めて振り返るべく、バックナンバーの中から、編集部が選ぶ“今、改めて読みたい”記事をセレクト。時代を超えて響く言葉や視点をお届けします。

 第3回目の特集は、カープ歴代エースのインタビューセレクション。

 佐々岡真司、黒田博樹、前田健太——。時代ごとに“エース”の名を背負い、広島のマウンドに立ち続けた男たちがいた。カープのエース系譜を刻んだ投手たちの言葉を、改めて辿っていく。

 2016年、実に52年ぶりとなる海外出身の『沢村賞』投手が誕生した。2015年にカープに入団した、クリス・ジョンソンだ。先発として登板したNPBデビュー戦では無四死球完封勝利をあげ、その年の最優秀防御率のタイトルを獲得。カープの三連覇にも大きく貢献した。25年ぶりのリーグ制覇を成し遂げた瞬間、助っ人左腕は何を感じていたのだろうか。(全2回/第1回)

(『広島アスリートマガジン2016年11月号』掲載記事を再編集)

カープでは先発として6年間プレー。通算防御率は2.76を記録している 

◆忘れ難い優勝の瞬間

— 2016年シーズンを振り返ってみて、ご自身のなかで満足している点を教えてください。

「シーズンを通して一番満足していることは、やっぱりシーズン優勝です。その中でも優勝を達成した瞬間は、忘れがたい思い出の一つです。グラウンド上でチームメートと喜びを分かちあうというのは非常に素晴らしい瞬間だと思いました。優勝ができたということはみんなが良い形でシーズンを勝ち進めていったということです。勝ちがどんどん増えていくというその過程も素晴らしかったと思いますし、それがチームメート全員で成し遂げたということことが自分でも実感できるシーズンでした。全体的に見てチームとしても、個人としても非常に満足のいくシーズンだったと思います」

— 優勝が決まった瞬間はどのような気持ちになりましたか?

「全ての感情が出てしまいました。喜び、うれしさ、涙、本当に気持ちというすべての気持ちが出ていたと思います。もちろんこれは私だけではなく、全員がそういう気持ちだったと思います。本当に幸せな瞬間でした」

— 優勝決定試合が終わった後に行われたビールかけはいかがでしたか?

「とにかくベタベタでいろいろな所がビール臭かったですが、そんなことはお構いなしにみんながびしょびしょになってはしゃいでいました(笑)。カツラを被ったり、水鉄砲を持参していたチームメートもいましたし、個々に楽しんでいるということがよく分かりました。あんなに大人数でビールをかけながら喜びを分かち合うということは滅多にないことですし、あのような場に入れてみんなと喜びを共有できたということは、本当に幸せでした」

◆心強かった好調攻撃陣

— ジョンソン投手と言えば、来日1年目から結果を残されましたが、今季に臨むにあたり、投球について変えたことはありましたか?

「特にありません。今季も石原(慶幸)と1年間バッテリーを組ませてもらいましたが、彼が自分の持ち味を十分に引き出してくれたと思っています。もちろん今季は2年目なのでいろいろ相手チームも研究してきた部分はありました。そうした部分はチームや打者ごとにいろいろ勉強して、攻め方についてマイナーチェンジを行い対処しました。ただそれも大きく投球を変えたというわけではありませんし、あくまでもそこは自分と石原でゲームの流れを見ながら、試していくといった程度であり、少しの変化です」

— 昨季は打線が不振な部分がありましたが、今季は対照的に非常に好調でした。ジョンソン投手から見て今季の打線についてはいかがでしたか?

「昨季と比べると攻撃陣は大きく数字を伸ばしてくれました。本塁打、盗塁などでリーグトップの成績を残しましたし、一番顕著に変わったのは逆転数です。投手が相手に先制を許しビハインドの状況になったとしても、そこから打線が逆転し勝ち星を手にするという試合を何試合も経験しました。それは攻撃陣全体がアグレッシブに戦っていった成果だと思いますし、今季の数字はそれらの現れだと思います」

(後編へ続く)