1993年の創刊以来、カープ、サンフレッチェを中心に「広島のアスリートたちの今」を伝えてきた『広島アスリートマガジン』は、2025年12月をもって休刊いたします。32年間の歴史を改めて振り返るべく、バックナンバーの中から、編集部が選ぶ“今、改めて読みたい”記事をセレクト。時代を超えて響く言葉や視点をお届けします。
第3回目の特集は、カープ歴代エースのインタビューセレクション。
佐々岡真司、黒田博樹、前田健太——。時代ごとに“エース”の名を背負い、広島のマウンドに立ち続けた男たちがいた。カープのエース系譜を刻んだ投手たちの言葉を、改めて辿っていく。
2015年に入団したクリス・ジョンソンは、在籍期間6年で128試合に登板し57勝をあげた。最優秀防御率(2015年)・沢村賞(2016年)を受賞するなどカープのみならずリーグを代表する投手として活躍し、『KJ』の愛称で親しまれた助っ人左腕が、カープファンへの思いを語った。(全2回/第2回)
(『広島アスリートマガジン2016年11月号』掲載記事を再編集)
◆印象に残っているのは、マジック点灯後の巨人戦
— 攻撃陣が好調だと、投球にも良い影響を与えるのではないでしょうか?
「先発投手としてこれだけの強力な攻撃陣に支えられているという意識を持つことで、気持ちを楽にして投球に集中できる部分はありますし、結果的に投球内容自体にも良い結果をもたらしてくれました。逆に攻撃陣からすれば投手が抑えていれば勝てるという意識を持っていたはずですし、その点については非常に良い循環がチーム内に生まれていたと思います」
— 2016年シーズンは26試合に先発登板をされましたが、ご自身のすべての投球を振り返ってみて、印象に残っている登板はありますか?
「今季も本当にいろいろな試合を経験しただけに、一つに絞るのは難しいですね。ただ、どうしても一つを選ぶのであれば、マジック点灯後に東京ドームで登板した8月23日の巨人戦です。試合結果としては私が9回を投げて降板し、延長戦の末敗北してしまったのですが、特に記憶に残っています。あの試合は、自分のなかで一番気持ちが入っていた登板だと思います。9回まで投げて、勝敗が決まっていないという状況も珍しいですからね。そういう緊迫した試合で自分がマウンドに立ち続けることができたというのは、特に印象に残りました」
— ジョンソン投手は新井貴浩選手(当時)が2000安打(4月26日・ヤクルト戦(神宮球場))と300号本塁打(8月2日・ヤクルト戦(神宮球場))を達成した試合、どちらもマウンドに上がっています。
「どちらの試合も神宮球場の半分が赤く染まっていて、本当にすごい雰囲気でした。選手たちはいつも素晴らしいプレーを見せていますがあの雰囲気にうまく乗り、実力を最大限に発揮できたと思います。新井選手が記録を達成した瞬間は、ファンの盛り上がりがすごかったです。新井選手は記録達成に安心したのか分かりませんが、その後もどんどん打ってくれていましたね。特に2000安打は、シーズン序盤に決めることができて良かったと思います」
— 話題は変わりますが、2016年シーズン途中にはカープと新たに3年契約を交わされました。その点について率直な思いを教えてください。
「3年契約を早い段階でしていただいたということは非常にうれしいことですし、少なくとも契約期間内は野球ができるという保証があるということです。その点も幸せだと思っています」
— モチベーションなどの面で何か変化はありましたか?
「契約を交わしたことで自分が何か変わった点はないと思います。自分は勝ちたいという気持ちが強く、負けることが大嫌いな人間です。常に登板時には勝つ気持ちでマウンドに上がっています。3年契約した前と後でそういった気持ちが変化したということもまったくありません」
— では、ジョンソン投手にとってカープファンとはどのような存在でしょうか。
「本当にファンのみなさんには感謝しています。ヒーローインタビューでも言っていますが広島のファンは日本一のファンだと思っていますし、世界の野球ファンと比べても全く遜色ありません。本当に世界一のファンだと思っています。それはなぜかというと、どんなに小さな地方球場であっても、カープの応援団がいるところは必ず熱い声援が起こっています。勝ち試合はもちろん、どんな展開でも声援を送ってくれているファンの気持ちが自分たちをつき動かしています本当に心から全国のカープのファンにはありがとうと言いたいですね」
■クリス・ジョンソン Kris Johnson
1984年10月14日生、アメリカ出身、投手
ウェチタ州立大ーレッドソックスーパイレーツーツインズー広島(2015年〜)