今月23日に迫ったプロ野球ドラフト会議。来季チームに加わる新戦力発掘のため、日本全国を飛び回っているのがスカウトだ。ここではカープ・松本有史スカウトに、ドラフト、特に『育成ドラフト』について話を聞いた。百戦錬磨の松本スカウトが語る、育成選手指名の基準や指名までの舞台裏とは。(全2回/第1回)

これまで松本スカウトは13人の育成選手を担当してきた。

「能力的に何か1つ足りない」。支配下と育成の判断基準

 私は2006年からスカウトとして活動していますが、これまで多くの育成選手を担当してきました。支配下指名選手と育成指名選手のスカウティングにおいて、最初の段階から差をつけていることはありません。

 あえて大きな違いを言うならば、支配下選手よりも「能力的に何か1つ足りない」のが育成指名選手となります。

 普段のスカウト活動の中で選手のさまざまな部分を見て指名する判断をしていきますが、「もう少し、この部分が良かったら支配下指名できるのにな……」という選手は数多くいます。

 毎年1月頃から次年度ドラフトのスカウト活動が本格的にスタートし、最初は全てフラットな目線で選手を見ていきます。高校生であれば7月、8月頃にはある程度「支配下指名が適正なのか、育成指名でいくべきか」などの判断に入ります。

 育成選手の判断について「能力的に何か1つ足りない」と言いましたが、逆を言えば「何か1つの能力が秀でている」からこそ、育成ドラフトでの指名候補となるわけです。基準としては、たとえば、肩が強い、滅法足が速い、バットに当たれば飛ばす、体が大きくて球が速い……など、特徴的な能力を持っている選手が評価対象になります。

 私が担当した育成選手は13人いますが、これまでの経験でお話をさせてもらうと、初めて育成契約から支配下登録となった選手が、池ノ内亮介(2010年育成ドラフト2位)でした。彼は中京学院大出身で同大学出身・菊池涼介の1学年上の投手です。

 彼に関しては大学4年時点では「制球力は劣るけれども、球速がある」という評価の投手でした。カープ入団後、3年目のオフに支配下登録となりました。結果的に長く活躍はできませんでしたが、彼が支配下登録となった際は本当にうれしかったです。

(後編へ続く)