2018年に創部した社会人野球・エイジェック硬式野球部。2020年から同野球部2代目監督として新鋭を社会人野球の二大大会へ初出場、都市対抗野球本戦初勝利にも導いた難波貴司氏が今季で監督を退任する。ここでは、約5年間エイジェック硬式野球部を率いた難波監督にこれまでの指導等について聞いた。(全2回/前編)
◆『5段階評価』で選手自身の現在地を明確化
―これまで5年間、エイジェックは社会人野球で最も選手が多いチームとして活動されてきました。多くの選手とコミュニケーションを取る上で意識されていることや方法などはありますか?
「コミュニケーションツールの一環として、選手全員の野球の技術や取り組む姿勢を5段階評価にして『通知表』のようなものをつくっています。その評価をランキング化し、定期的に選手全員に共有します。ポイントを増やさなければいけない選手や、今の立場を守らないといけない選手。この方法を用いることで、選手たちそれぞれがチームのどの位置にいるのかを選手間で理解し、良い競争を生み出してくれていると感じています。ただ、これはあくまでコミュニケーションのツールです。人数が多いからこそ、自主性のある選手とそうでない選手に差が出てきます。ベンチに入れるのは25人で、今年は部員が49人いるのでおおよそその枠をつかめるのは半分です。ですから生き残りをかけてやってほしいですし、認識が甘い選手もまだ多いので、数字として事実や結果を見ながら、さらなる競争力をつけてほしいと思っています」
ー評価基準にはどのような項目があるのでしょうか?
「試合への出場、ヒット数はプラスですし、エラーや失点があればマイナスです。それに加えて、野球の技術だけでなく、それ以外の『チームへの貢献度』も加味します。例えば元気ある姿を見せてくれたり、試合で効果的な声出しをしていたりすればそれは加点の対象です。練習に遅刻するようなことがあれば減点です。練習試合より、都市対抗予選の方が査定のポイントも多くなるようにしているので、『公式戦に出ないことには、査定は良くならない』ということも選手たちには、ダイレクトに伝えています」
ー選手とのコミュニケーションを取る上で工夫されていることなどはありますか?
「エイジェックは寮制ではないので、どうしても選手たちと一緒に過ごす時間も限られます。ですので、選手たちを数人ずつ順番に私の家に呼んで、食事会を行うようにしています。試合のビデオを見ながら、いろいろな話をします。エイジェックの部員数は社会人野球としては大変多くいますが、点数の低い、高いは準関係なく、一人ひとりと向き合う時間にしているつもりです」
―難波監督の戦術は、足を使った野球をイメージしますが、どのような野球展開が理想と考えていますか?
「チーム状況として、足の速い選手がそろっており、その一方でホームランを打てる選手が少ないのが現状です。そういうチーム状況でどう勝つかを考えたときにこの形になったという感じですね。なかなかホームランバッターを獲得するというのは難しいですが、今年は和田(泰征)、渡辺(凌矢)、恋田(孝一朗)など、遠くへ飛ばせる選手が入ってきてくれました。社会人一年目で、なかなか結果を出すのは難しいと思いますが、みんなそれぞれがが頑張ってくれていると思います」
(後半へつづく)
◆難波貴司(なんば・たかし)
1965年4月19日生/大阪府出身
球歴:堀越高(1981-1983)-東海大(1984-1987)-日本通運(1988-1995)
指導歴:日本通運ヘッドコーチ(1997-2009)、明治学院大学監督(2016-2019)、エイジェック男子硬式野球部監督(2020-2025)
エイジェックでの主な成績
・第92回~第96回都市対抗野球大会栃木県予選 5期連続優勝
・第92回都市対抗野球大会出場(就任1年目、チーム初出場)
・第48回社会人野球日本選手権大会出場(就任3年目、チーム初出場)
・第95回都市対抗野球大会出場(就任4年目、1回戦突破・チーム初勝利)

