見事に2025 JリーグYBCルヴァン杯決勝で勝利し、2022シーズン以来となる国内三大タイトル獲得を獲得したサンフレッチェ広島。ここではクラブOB・吉田安孝氏が、激戦が続いた9月・10月を振り返る。(全2回/第1回)

10月4日の町田戦で、復帰後初ゴールとなるPKを決めたトルガイ

課題の2得点目を奪い、勝ち点3をつかんだ2試合!復帰選手の活躍も、タイトルへの追い風に?

 9月、10月もサンフレッチェ広島は熱い戦いを繰り広げました。複数得点で勝利した試合もあれば、アディショナルタイム終了間際に逆転した痺れる試合もありました。

 アジアチャンピオンズリーグエリート (ACLE)も含め引き分けの試合も多かったサンフレッチェですが、ここで課題として挙げたいのが、 「2得点目が決めきれない試合が多かった」ということです。

 1失点というのは、試合中のアクシデントなどで絶対に起こりうるものです。ただ、いま大切にしたいのは失点を振り返ることよりも、「どうすれば2得点目を取ることができるのか」ではないでしょうか。そしてこれは、今シーズンここまで言われ続けてきた課題でもあります。

 実際に勝ち点3をつかんだ試合、たとえば9月27日の福岡戦 (ベスト電器スタジアム、◯2−1)や10月4日の町田戦 (エディオンピースウイング広島、◯2−1)は、複数得点ができたからこそ勝ち切ることができた試合でした。1点を奪ったあとの2点目にどれだけ意識を高く持って集中していけるか。タイトルを目指すうえでは、その点が非常に重要になってくると思います。

 そういう意味では、「いかに2得点目をあげるか」という課題を克服して勝ち切った福岡戦は、ここ2カ月のベストゲームといって良いでしょう。

 この試合では、課題であった追加点を、しかも流れのなかで奪うことができました。終了間際に相手に1点を返されていますから、2得点目である田中聡のゴールがなければ、ドローに終わってしまっていたところです。2得点目の重要性を改めて感じる試合になりました。

 劇的勝利で大いに盛り上がった町田戦では、2得点ともセットプレーをきっかけにゴールが生まれています。1得点目は菅大輝のコーナーキック (CK)にキムジュソンが頭で合わせ、2得点目はCKの競り合いのなかで獲得したPKをトルガイ・アルスランが決めて生まれました。トルガイにとっては長期の負傷離脱から復帰後の初得点でした。映像で確認すると、最後の最後まで相手GKから目を逸らさずゴールを決めていたのが印象的です。一瞬ボールを確認する瞬間はあったかもしれませんが、それでもゴールの瞬間まで、ほぼGKを見つめて決め切っている。アディショナルタイムの終了間際、このPKを外せば勝ち点で並ぶ町田に引き分けて終わるという局面であのプレーができるテクニックとメンタルは、やはり一流の選手だと感じました。

 今シーズン、サンフレッチェのセットプレーからの得点はリーグトップです。相手陣内に攻め込み、圧力をかけ続けた結果、セットプレーを得ることができているのだと思います。もちろん、パスを回してショートカウンターから得点できるような展開がベストです。ただ、選手たちのなかにセットプレーへの自信があり、「いけるぞ」という雰囲気もある。スタジアムも得点を期待して空気が変わる。そうした良い相乗効果が生まれているように感じます。

(後編へ続く)