ペナントレースを5位で終えたカープ。昨年までチームをけん引してきた投手陣が夏場を前に崩れるなど苦しんだ一方で、若い選手が一軍出場機会をつかむなど来季以降につながる兆しも見えた。ここではOB・解説者としてカープを見てきた大野豊氏が、2025年シーズンを独自の視点で総括する。(全2回/第1回)
◆先発の三本柱が誤算……転換期を迎える投手陣
新井貴浩監督が就任して3年目の2025年シーズンでしたが、カープはペナントレースを5位という結果で終えました。
投手陣ですが『先発投手の三本柱で勝つことができなかった』というのが第一印象です。大瀬良大地、床田寛樹、森下暢仁の全員が負け越してしまい、彼らだけで借金が10を超えています。3本柱での計算がうまく立たなかったことが、今年のカープにとっては大きな誤算でした。打線の援護に恵まれなかったと言えばそれまでですが『ここで抑えてくれれば』というところで抑え切れない試合が非常に多く見られました。
例えば森下を見ると、シーズンを通して6勝14敗に終わっていますが、しっかりとゲームをつくることのできた試合もかなりありました。床田も6完投と奮闘してくれましたが、その8月26日の巨人戦以降は全く勝てない試合が続きました。これはシーズン終盤に入って、バテてしまったというところもあったのだろうと感じます。後半の投球を見ていると、それまでの床田の投球とは別物のようでした。体のキレも球のキレもなく、コントロールも悪くなってしまっていました。
ここで一番避けたいのは、『完投させたから床田がバテてしまった』というイメージがついてしまうことです。現代のプロ野球は分業制になっていて、投手に無理をさせないというのがセオリーです。床田に関しては、シーズンを通じてあれだけ投げてくれたというのは先発として役割を果たしている証拠です。ただ、シーズンを通して床田らしい投球を見せてもらいたかったというのが本音です。すでに来シーズンに向けてチームは動き出していますから、ここからは今シーズンの反省を踏まえて、いかに改善していくかということが大事でしょう。
先発投手に関しては、九里亜蓮が抜けた穴をカバーする投手が出てこなかったことも大きな課題でした。
森翔平や玉村昇悟、髙太一らが出てきましたが、黒星が上回ってしまう結果に終わりました。いずれの投手もシーズンを通して先発ローテーションを守ることができなかったことに加え、三本柱とされていた投手たちが勝ち切れなかった。これが今シーズン苦しんだ大きな理由のひとつだと感じています。
先発投手が負ける要因としては、とにかく序盤の失点が多かったことが挙げられます。味方打線が点を取ってくれても、すぐに点を取られてしまう。そうした試合内容が非常に多かったように思います。
リリーフ陣に関しては、開幕時クローザーを務めていた栗林良吏の不調から始まり、思い通りの構成で戦えませんでした。途中でハーンに守護神を託しましたが、上手くはいきませんでした。最終的には森浦大輔がクローザーを務めましたが、そんななかでもリリーフ陣はよく頑張ったと感じています。苦しい台所事情のなかでよく頑張ってはくれましたが、こちらも先発陣と同様に、シーズンを通して、それぞれの役割が続かなかったことは残念でした。
2024年シーズンまでは、投手陣が踏ん張ったけれども打線の援護がなく……という傾向でしたが、今シーズンに関して言えば、その投手陣も崩れてしまった。それも、昨シーズンよりも早い段階で崩れてしまったことが負けの数に直結していると感じました。
先ほど名前を挙げた髙のほか、終盤には常廣羽也斗など若い投手も一軍で投げる機会を得ました。まさに今、カープの投手陣は転換期を迎えていると思います。そうした点も踏まえて、来季、さらにその先に向け、投手陣を立て直すことが第一になってくるでしょう。
(野手編へ続く)

