ペナントレースを5位で終えたカープ。野手では二人の助っ人外国人が活躍したほか、小園海斗が二冠に輝き、若い選手が一軍出場機会をつかむなど来季以降につながる兆しも見えた。カープのレジェンド左腕・大野豊氏は、今季のカープ打線をどう見てきたのか。独自の視点で解説する。(全2回/第2回)

チーム最多の17本塁打を放ったファビアン

若手に機会を与えた打線。来季は起用法にも工夫を

 野手陣に関しては、2人の新外国人が加わったことが大きな変化でした。

 ファビアンはチームトップの17本塁打を放ちましたし、モンテロも9本塁打をマークしています。この2選手の存在は、明らかに昨シーズンよりもプラスアルファになっていました。さらに、小園海斗は首位打者と最高出塁率の二冠に輝き、チームの主軸と認められる活躍でした。そして数多くの若手が起用されるなか、チャンスをつかんだのが8年目の中村奨成でした。一時故障で離脱はありましたが、シーズン最後まで主に1番・センターで非常に良いアピールを見せて終えました。

 今季の特徴でもある若手に出場機会が与えられたのは良いことでしたが、若手メインでの戦いが、やや早すぎたという印象があります。

 例えば夏頃から少数の若手を起用することはあっても、今季は複数の選手を一気に起用する思い切った采配がみられました。カープには菊池涼介、秋山翔吾といった百戦錬磨のベテランがいます。もちろん若手に経験という意味ではプラスですが、ベテランとバランス良く起用するのも方法のひとつと感じました。

 確かに彼らは年齢は重ねていますが、それだけ経験値が豊富で、2000安打など大きな目標もあります。レギュラークラスの選手たちは、一時的に打てないことはあっても、シーズンを通して帳尻を合わせる技術を持ち合わせています。彼らは終盤、出番が限られましたが、体力面を管理しながら、フルシーズン安定した起用も見てみたいところです。

 戦いながら育てていくことは大切です。しかし、『ただ打席を与えるだけ』では選手は育っていきません。同じチャンスを与えるのであれば、『こういう状況、シーンのなかでどうすれば良いのか』、『自分の役割は何なのか』も頭に入れながら、作戦のなかの1つとして起用しても良かったのではないかと感じました。

 新井監督はシーズン最終戦の挨拶で、『来年も苦しみは続いていく』と話していました。確かに、来年も厳しいシーズンになる可能性はあるでしょう。来シーズンは監督に就任して4年目となりますが、本来であれば4年目は、3年をかけてある程度チームの土台ができた上で戦いに挑まなければならないシーズンでしょう。ただ、今シーズンを振り返り、そこから来シーズンに目を向けた時、『3年間の積み上げの上に』というよりも、まだまだチームは変革の途中、そんな中で戦っていくシーズンになるのではないかと受け止めています。

 ここからは、2025年シーズンの結果を踏まえて野手陣が何を感じ、秋季キャンプ、春季キャンプのなかでどれだけ力をつけることができるかが大切になります。まずはキャンプを通じて、改めて土台づくりから取り組んでいってもらいたいと思います。その土台には、体力面だけでなく、一軍でフルシーズンを戦い抜けるだけの精神力も含んでいます。

 特に若い選手たちのなかには、まだまだ精神力が身についていない選手もいるのではないかと思います。チームのため、そして自分のため、足りないものや弱点を鍛え抜くといった気持ちで取り組んでいく必要があるでしょう。そうした取り組み、鍛錬が成長につながりますし、後々自分を助けてくれるものです。

 私個人としては、一軍の試合は、育てるための舞台ではないと考えています。一軍は勝つために戦う場所です。これからも若い選手に一軍で経験を積ませるのであれば、これまでとは起用に対する考え方を変えていく必要もあると感じています。

 『自分たちが強くなるために、何をすべきか』。ここから始まるキャンプはそれを考え直すための良いチャンスだと捉え、カープファン、プロ野球ファンのみなさんから『カープは変わったな』、『試合を見ていて楽しい』と思ってもらえるようなチームになっていってもらいたいと思います。