自力優勝の可能性が消滅し、9月6日には2013年シーズン以来となる借金9を抱え最下位に転落(現在は5位)するなど、カープを取り巻く状況は厳しくなっている。

夏場以降に驚異的な粘りを見せた2013年のカープ。前田健太投手を筆頭に個々の選手が持ち味を発揮していった。

 左右の軸として期待された大瀬良大地とクリス・ジョンソンが共に戦線を離脱し、打撃陣でも西川龍馬がコンディション不良で登録を抹消。コロナ禍が生み出した過酷な連戦は、チーム内に想像以上に深刻な状況をつくり出してしまっている。

 カープが3連覇を達成していた2016年~2018年は借金とは無縁の独走体制を取っていたが、3連覇以前は、苦しい戦いを強いられるシーズンが続いていた。しかし、そんな中でも9月に驚異の追い上げを見せ、初のクライマックス・シリーズ(以下、CS)進出をつかみとったのが野村謙二郎監督4年目のシーズンとなる2013年だった。

 とはいえ最終的にCS初進出という歓喜の瞬間を迎えながら、前半戦は今季と同じく苦しい戦いを強いられていた。当時若手だった菊池涼介、丸佳浩(現巨人)の“キクマルコンビ”が打線を牽引するなど、個人的に成績を残す選手はいたものの、開幕からチームとしては低迷。首位・巨人、2位・阪神の後塵を拝す形で、4月以降は常に借金を抱える苦しい戦いを余儀なくされていた。

 前半戦を終えた時点で、カープは借金8(35勝48敗1分)を抱えての5位。Bクラス争いは四つ巴の混戦だったとはいえ、そこから頭一つ抜け出すだけの勢いは少なくとも当時のチーム状態からは感じ取ることができなかった。

 ところが大失速を見せた2012年と違って、2013年のカープは最終盤の9月に急激なV字回復を見せた。7連勝などで下位4チームとの団子状態を抜け出すと、借金を完済できなかったとはいえAクラス入りが確定。オールスターゲーム以降を34勝24敗2分の好成績で駆け抜け、球団初となるクライマックス・シリーズ(CS)進出を成し遂げた。

 投げては前田健太が最優秀防御率のタイトルを獲得し、ベストナインにも選出。打者では盗塁王を獲得するなどした丸佳浩が年間を通じて存在感を示し続けた。キラ、エルドレッド、バリントン、ミコライオら助っ人外国人の活躍も、最終的なCS進出を引き寄せる要因となった。

 今季は新型コロナウイルスの影響でCSが中止となるため、1位以外の順位が持つ意味はそれほど大きくない。とはいえ、少しでも上の順位でフィニッシュするに越したことはない。

 2013年はもっとも厳しいときで借金14(7月24日)を計上した。試合数やチームをとりまく状況は雲泥の差があるが、後半戦ではCS初進出を成し遂げたときのような粘りのV字回復を期待したいところである。