◆ラプソードを使う際、最も大切なのは……

 もちろん、ラプソードで能力を計測しただけで上手くなるわけではありません。大切なのはラプソードのデータをどう活かすかです。

 逆に言うと、データを分析することができない人が使うとあまり効果を得ることができません。ラプソードで計測すると、幾通りのデータが数値として表れます。そのデータから選手を正しい方向に導くことができるかが指導者の腕の見せ所となります。

 ラプソードは学力テストと似ています。受験勉強を思い出してください。どんなに優れた模擬試験を受けても志望校に合格するとは限りません。テストの結果を見て、受験に向けてどう課題を克服していくかが大事です。逆に言うと、点数が出るからこそ、その分析が可能となるのです。

 これまで野球界は、自分の能力を数値化するテストを取り入れてきませんでした。学力テストと同じで、ラプソードを使うことで、自分に足りない部分を、嫌というほど思い知らされることもあります。ただ、そこで挑戦を止めてしまってはいけません。目の前のデータを選手と指導者が受け止めることができるか、そして数値で表された弱点をどう改善していくかが大切なのです。

最新のポータブルトラッキングシステム『ラプソード』

 話を島内颯太郎投手に戻します。カープ球団HPで公開されている、飯田スコアラーのブログ「イイダラボ」。2020年6月24日のブログでは島内颯太郎投手のラプソードのデータが公開されました。プロ野球球団がシーズン中に、ラプソードを使った練習を取り入れて、かつデータをファンに公表してくれることは非常に画期的なことです。

 強化指定選手を育てる部署をつくり、最新機材を使い、選手の能力を引き上げようと取り組んでいることは、いちトレーナーとして大いにに共感できますし、実際、島内颯太郎投手は成長を遂げました。“なんとかしよう”という気持ちだけではなく、データをもとにしっかり”考えていこう”という流れがプロ野球界で増え、選手とコーチにデータ活用のノウハウが蓄積していけば、選手のレベルもどんどん上がっていくのではないかと思っています。

 次回のコラムでは、ラプソードを使うことで、島内颯太郎投手が投げるボールにどんな変化が起こったか、報道されているリリースポイント以外に改善された部分はないか、「イイダラボ」に掲載されたラプソードのデータをもとに僕なりの解釈をお伝えします。

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高島誠(たかしま・まこと)
広島県東広島市の西条町にある、野球専門のトレーニングジム「Mac's Trainer Room」の代表。オリックス・ブルーウェーブ(現オリックス・バファローズ)、MLBワシントン・ナショナルズのトレーナー経験があり、現在も数多くのプロ野球選手とトレーナー契約を結んでいる。趣味はパルクールとサウナで、サウナ・スパスペシャリストの資格も持つ。野球トレーニングのオンラインサロンの運営、【英語】x【身体作り】x【野球】がテーマの中学硬式野球チーム「東広島ポニー」に携わるなど、様々な分野で活躍。「Mac's Trainer Room」のYouTubeチャンネルでは、野球トレーニングに関する動画を公開中。
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