ペナントレースが佳境を迎えるなか、カープを取り巻く状況は厳しいままだ。なかでも投手陣は、チーム防御率が示すように再構築が急務な状況となっている。

プロ6年目の今季、塹江敦哉投手がキャリアハイの数字を更新し続けている。

 先発、リリーフともに本調子とは言えないなか、OBの大野豊氏はどのような視点で今季のカープを捉えているのか。今後の展望と共に、大野氏が現在のチーム状況を紐解いていく。

◆今年は育成の年という一種の割り切りも、どこかで必要かもしれません

 後半戦に入り巻き返しを図りたいところでしたが、カープのチーム状態は依然、厳しいままです。やはり大瀬良、ジョンソンという左右の両エースがいない状況では戦績が安定しないのも致し方ありません。床田、九里などが復調気配を見せていますが、9月戦線を勝ち越しで終えることはできませんでした。

 まだ諦めるわけにはいきませんが、今後は勝ち試合を増やす一方で先を見据えた若手の起用というものも必要になってきます。その意味では塹江、島内、ケムナとリリーフでは3連覇を経験していない投手が新たに台頭してきました。制球力という部分ではまだ課題もありますが、ここまでは非常によく頑張ってくれていると思います。

 状態が悪い選手を我慢して使うのも一つの起用法ですが、若い選手に経験を積ませることも同じくらい重要なことです。チームが過渡期にあるなか、勝利と育成を両立させることは口で言うほど簡単なことではありません。そんななか、少しずつとはいえ打者も投手も底上げが見え始めました。佐々岡監督にとっては苦しいシーズンになっていますが、若手選手を積極的に起用する采配は悪くないと思います。

 もちろんファンの方はジレンマを抱えているでしょう。ただ、勝つのと同じくらいに新しい力を育てることも重要ですから、今年は育成の年という一種の割り切りが必要なタイミングもどこかで必要になってくるかもしれませんね。

 チームとしては苦しいですが、若手選手にとっては大チャンスです。ここで一気にポジションを奪うつもりで、投手、野手ともに今後もアピールを続けてほしいですね。