プロ3年目を迎えるカープのケムナ誠が、充実のシーズンを過ごしている。7月5日に今季初の一軍昇格を果たすと、今季はここまで25試合に登板。さまざまな場面で起用され、貴重な戦力として存在感を示している。

力強い直球を武器に、一軍で経験を積んでいるケムナ誠投手。

 直近の登板となる9月30日の巨人戦(マツダスタジアム)で、5回無失点と好投していた野村の後を受け、2イニングを無安打無失点。勝ち越し直後の大事な場面で完璧な投球を披露し、試合の流れを手繰り寄せると、打線のさらなる追加点を呼び寄せた。

「一軍に上がってからはどうしても力感が出過ぎてしまって、失点しまうシチュエーションでは四球が絡んでしまっています。1死とってから、四球とか、そういう場面があるのは課題だと感じています」 

 9月22日の登板から3試合連続で無失点を続けているが、いずれの登板でも四球は0。自身の課題と向き合う右腕は、着実にステップアップを遂げている。

 右腕最大の魅力はなんといっても、150キロを超える直球だ。現在のケムナの投球の組み立ての基本となっている直球は、今季台頭する若手投手たちの中でも指折りの力強さを誇る。

「なるべく、こちらに試合の流れを引き戻せるように、全力で投げて抑えて、味方打線にリズム良くつなげられるようにということを意識しています」

 複数イニングを任される立場ではあるが、意識するのは目の前の打者のみ。入団以来指導を受けてきた澤崎俊和投手コーチからの指導を胸に、一球に思いを込めて投げ込んでいる。

「澤﨑コーチに『とにかく一球一球全力で投げていくように』と言われてから、それをとにかく意識するようにしています」

 先発、中継ぎとこれまでチームに貢献してきた主力投手が一軍戦線から離脱していく一方で、次世代の投手陣を担うべく若手投手陣が徐々に台頭しつつある今季のカープ。投打の歯車が噛み合わず苦しい戦いを強いられているが、いかに窮地に追い込まれようとも味方打線を勇気付けるべく、背番号29は全力で右腕を振り抜いていく。