◆中島選手から三振を奪ったカットボール

 あくまでも「イイダラボ」に掲載されているデータでの判断ですが、もし僕が、島内投手のトレーナーであれば、リリースポイントだけを修正して、EFFICIENCY(回転効率)が94%のストレートの回転に近い“改良前のフォーク”も、86%のジャイロ回転気味の“改良後のフォーク”も投げるようにアドバイスします。データを見ると、この2つのフォークは落ち始めるタイミングも違うため、投げ分けることで大きな武器となります。

 そこに、ジャイロ回転のカットボール(カットボールはジャイロ回転のボール)をマスターできれば、ジャイロ系のボールも、カットボールと“改良後のフォーク”の2種類になるため、より打者を迷わすことが可能となります。

 9月23日の巨人戦のことです。5回裏に、島内投手が135kmのカットボールを投げ、中島裕之選手を空振り三振にとった場面がありました。この鋭く落ちるカットボールを常時投げることができるようになれば、改良後のフォークボールも、もっと活きてくるのではないかと思います。

 島内投手には150kmを超える力強いストレートがあります。ストレートは一軍でも十分通用するボールだと思うので、“ストレートを活かす変化球”を習得していけば、カープを背負って立つ投手になるのではないかと思います。緩いカーブをマスターし、緩急をつけられるピッチングができるようになれば、先発投手候補としても名前が挙がってくるかもしれません。

 前回のコラムでもお伝えしましたが、ラプソードで能力を計測しただけで、技術が上達するわけではありません。大切なのはラプソードのデータをどう活かすか。ラプソードで計測すると、幾通りのデータが数値として表れます。そのデータと向き合い、数値で表された課題をどう克服し、どんな選手になっていきたいかをより具体的に考えることができるのが、真実を映し出す機材『ラプソード』の一番のメリットです。

 島内投手のデータをもとにラプソードについてお話してきましたがいかがでしたでしょうか。今回のコラムは、カープ球団がHPでデータを公開してくれたおかげで、具体例を交えて、みなさんに紹介することができました。今回のカープのように、プロ野球球団がラプソードの詳細なデータを公開してくれることで、ラプソードが広まり、ラプソードを取り入れた練習が増えていくことで、選手1人ひとりのポテンシャルがもっと高まっていくのではないかと思います。

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高島誠(たかしま・まこと)
広島県東広島市の西条町にある、野球専門のトレーニングジム「Mac's Trainer Room」の代表。オリックス・ブルーウェーブ(現オリックス・バファローズ)、MLBワシントン・ナショナルズのトレーナー経験があり、現在も数多くのプロ野球選手とトレーナー契約を結んでいる。趣味はパルクールとサウナで、サウナ・スパスペシャリストの資格も持つ。野球トレーニングのオンラインサロンの運営、【英語】x【身体作り】x【野球】がテーマの中学硬式野球チーム「東広島ポニー」に携わるなど、様々な分野で活躍。「Mac's Trainer Room」のYouTubeチャンネルでは、野球トレーニングに関する動画を公開中。
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