オリックス・ブルーウェーブ(現オリックス・バファローズ)、MLBワシントン・ナショナルズのトレーナーを務め、メジャー時代は「マック(高島の愛称)はゴッドハンドを持っている」と高い評価を得たトレーナー・高島誠。この連載では、数々のプロ野球選手を指導してきた経験をもとに、これまで公では語られることのなかった、マック流・野球パフォーマンスアップの秘密を披露していく。

 

◆変化しないストレートは存在しない

 野球専門のトレーニングジム「Mac’s Trainer Room」代表の高島誠です。『Mac高島の超野球塾』の連載をご覧いただき、ありがとうございます。

 今回は、『Rapsodo(ラプソード)』を使うことで、カープの島内颯太郎投手が投げる球にどんな変化が起こったか、報道されているリリースポイント以外に改善された部分はないか、カープ球団HPで公開されている、飯田スコアラーのブログ「イイダラボ」に掲載されたラプソードのデータをもとに僕なりの解釈をお伝えします。

 『Rapsodo(ラプソード)』については前回のコラムで取り上げていますので、読んでいない方は、まずはそちらを読んでいただくのをオススメします。

 各種報道でも出ていましたが島内投手はこのラプソードを使って、変化球のリリースポイントを修正。投球フォームの見直しを行ったことで、150km超の自慢のストレートの魅力が増し、一軍で着々と結果を残しています。

 

 ここからは「イイダラボ」(2020年6月24日)に掲載されていた島内投手のデータを元に、お話を進めていきます。

まず、投手がラプソードを使った際に出てくる『投球データ』のサンプルをご覧ください。

 

 ラプソードを使用すると、球速、回転率、回転軸、回転効率、変化量などを分析し、すべて数値として出してくれます。

 では島内投手のデータを一つひとつ見ていきましょう。まず『ストレート投球時』です。SPIN(回転率)が2390。EFFICIENCY(回転効率)が99%という数値を見る限り、スピンがしっかりと効いたストレートを投げることができていると言えるでしょう。少し専門的な表現になりますが、EFFICIENCY(回転効率)が高い球は、ホップ量とシュート変化が大きいボールとなります。

 島内投手のホップとシュート変化は、ブログ内では『横の変化量(H)/縦の変化量(V)』で示されていますが、これはホップとシュートの変化を示した数値です。15.2Hと49.3Vとあるので、ラプソードによると、ストレートが約15.2cmシュートし、約49.3cmホップしているということになります。

 補足ですが、ストレートはリリースしてから必ず何かしらの変化をしています。変化しないストレートは存在しません。よく「ストレートがシュートするのを修正したい」という相談を受けますが、使い方によってはシュート成分も立派な武器となります。

 アマチュア選手のなかには、綺麗なストレートを投げようとして、シュートしないようにしすぎて、実際には、回転効率の悪いカットボールになっている選手がたくさんいます。

 ちなみに、島内投手の投球フォームはスリークォーター気味です。このような投げ方の投手は、ボールをシュートさせたほうが打者にとっては厄介な存在になる可能性が高いです。島内颯太郎投手に限っていえば、ストレートのシュート成分を減らすことを意識しすぎないほうがいいと個人的には思います。

 また、ホップ成分だけで考えると、全盛期の藤川球児投手(阪神)のストレートは相当すごかったはずです。真っ直ぐが来ると分かっていても打てないのは、打者目線で見たとき、球が大きくホップしていると考えられます。球種はストレートですが、ある意味、藤川球児投手のような投げ方のピッチャーが投げられる魔球と言うこともできるでしょう。

 島内投手のデータに戻ります。ストレートを投げる際のリリースポイントの縦の高さが「1.74m」。リリースポイントの横の幅が「0.61m」。ここが今回、ニュースなどで取り上げられたポイントです。この2つの数字をフォークボールを投げる際のデータと比較します。