いよいよ本日10月26日に行われる2020年のドラフト会議。苦しい戦いを強いられているカープがドラフトで狙うべき選手とは? アマチュア球界を長年取材する安倍昌彦氏に今ドラフト候補選手の中で、地元・広島出身の有力選手を紹介してもらった。

ドラフト候補選手たちの投球を実際にブルペンで受けた上で選手たちの状況を語る“流しのブルペンキャッチャー”としての活動を行う安倍昌彦氏。

◆プロ志望高校生合同練習会で発見された逸材

 今年のドラフトについてファンのみなさんに見てほしいのは、各球団ごとの評価が例年ほど並列化されていないだけに、事前の報道で名前が全く上がっていなかった選手が指名されたりするケースが十分に考えられるということです。

 アマチュアの大会が軒並み中止になるなど、スカウトとしては苦しい状況での活動となったはずです。判断する材料が少なかっただけに結果が出ない球団も出てくるとは思いますが、異例の状況で応援するチームのスカウトが選手の何を見て、指名していくのか、ドラフト会議はプロ野球ファンの方々に注目してほしいと思います。

 そういう意味で注目したい選手が広島商高の寺本聖一(てらもと・せいいち)選手です。今年はドラフトに至るまでに、8月29、30日(甲子園)、9月5、6日(東京ドーム)に“プロ志望高校生合同練習会”が行われました。

広島商高の寺本聖一(てらもと・せいいち)選手

 西日本と東日本で合わせて120名程度の選手が参加するなど、プロを志望する高校生が一同に介した大きなイベントとなりましたが、正直この練習会が、各球団のスカウト陣に与えた影響は限定的だったと考えます。分かりやすく言えば、エントリーした選手の中で、期待以上のプレーを見せた、あるいはノーマークの選手が活躍したとか、そういうことはほとんどありませんでした。

 単純に収穫という面で見れば厳しい見方をせざるを得なかった、プロ志望高校生合同練習会ですが、そんな中でも有力な選手が全くいなかったわけではありません。今年の合同練習会について、一番の収穫とも言えるのがこの寺本聖一という選手を発見できたことです。

 印象的だったのは、選手たちが外野ノックを受けてからベンチの方に全力疾走で帰っていくその姿です。そのスピード、ランニングフォームを見る限り、全身のバネと身体能力の高さが一目瞭然でした。  実はその後、とある取材で広島商高に訪れたのですが、遠投はほぼ助走なしで100メートルを投げていました。決してスマートなプレーをする選手ではないのですが、先輩選手やコーチから“可愛がられる”タイプの選手だと思います。カープを見渡せば、左打ちの外野手は人数が決して少ないわけではないため、難しい部分はあると思いますが成長していけば羽月隆太郎選手や、正田耕三氏のようなカープの機動力野球を体現する選手になれると見ています。